災害被害を未然に防ぐ
大阪・天王寺で地学×都市計画の防災ツアーを企画


Z世代、いわゆる25歳以下の若い世代の人たちは、私たち親世代と比べて、アップデートされていて、クールで内省的で、非常に優秀な印象を持っています。特に環境問題に対する意識が高く、社会貢献を進んで行う人たちが多いと感じています。今回はそんなZ世代から、地学や都市計画の学びをベースに防災に関心を持ったという、大阪市立大学4年生の藤渕さんと、東京都立大学大学院2年生の奥村さんにお話しを聞きました。


2021年の末に、大阪の天王寺やなんばで「地学×都市計画 防災を学ぶまちあるき」というイベントを開催しようと計画を立てていた藤渕さんと奥村さん。大阪の災害の歴史や、リアルな避難時の行動、地域の構造物の防災能力などが学べるツアーだ。JR天王寺に集合して、あべのハルカス→茶臼山→四天王寺→清水坂・清水寺→大黒橋→なんば駅というコースで歩く予定だった。

残念ながら人数が集まらず、イベント開催には至らなかったが、二人の防災への関心は今も続いている。


イベント発案者の藤渕さんは、現在、大阪市立大学の理学部地球学科4年生。防災意識を持ったのは、小学生のとき、東日本大震災に遭ったことがきっかけだった。当時、千葉県の浦安市に住んでいたが、震災による液状化現象で、市域の9割ほどが被災し、インフラもひどくダメージを受けた。テレビでよく映し出された、マンホールから噴射した水や、地面の陥没や隆起、水浸しの道路。すべて目の前でリアルに体験したのだ。
「自分の住んでいた新浦安の映像や写真がテレビでよく使われていたんです。見本のような液状化現象を体験したような感じでした」
この浦安での経験が大きく影響して、地学について興味を持ち、それを学べる地球学科に進学することにしたという。

一方の奥村さんは、東京都立大学の大学院 都市環境科学研究科2年生。子どもの頃から地理や歴史が好きだったことから、都市環境学部に進学し、都市計画やまちづくりの勉強をしていたという。特に地方創生について研究しており、その一環として、フィールドワークで、東日本大震災の被災地、岩手県や宮城県によく訪れていたという。
「震災から5年以上が経っている時期だったんですけど、低地はまだずっと空き地が広がっていて。なかなかやっぱり震災が都市に与える影響というのは大きいな、という風に感じました」

そんな奥村さんと藤渕さんが出会ったのは、オンラインの経営の勉強会。初対面にも関わらず意気投合したそうだ。
「奥村さんとは何かと接点が多くて、興味の分野もすごく似ていて。一緒に何かしたいと思って、声をかけました」と藤渕さん。

誘ってもらって、とても嬉しかったという奥村さん。地学には興味があって、勉強したいと思っていた。「地学と都市計画という今まで結びつかなかったけれど、非常に関連性の高い分野を一緒にやるというのは、ひとつの新しい視点が生まれるんじゃないかと、非常におもしろそうだな、と思いました」

二人で相談して、大阪の天王寺で防災ツアーをすることに決めた。天王寺駅の周辺は、超高層ビルが建つが、その南北に位置する阿倍野区と天王寺区はノスタルジックな風景が広がっている。阿倍野には100年の歴史がある路面電車も走る。再開発の進む駅周辺と、それを囲むように残っている昭和な街並み。二つの顔を楽しめる地域だ。また「あべのタスカル」という大阪市立の防災センターがあって、防災の知識と技術を体験しながら学べる施設になっている。藤渕さんが大学の地学巡検で訪れたり、アルバイト先があったりと思い入れのあるエリアで、奥村さんもこのユニークな街並みに惹かれたそうだ。

そうして念入りに準備したが、今回はやむなく中止となってしまった。二人とも卒業が控えているので、今後の共同開催は難しそうだが、奥村さんはいつかまたイベント開催をしたいという。
「コロナ禍ではありますが、やっぱり都市や街を伝える仕事に携わりたくて、観光業界へ進むことにしました。いずれまた都市や街をお客さんに楽しんでもらえるイベントを開催したいですね」

藤渕さんは、ITの分野へ進む予定だが、一個人として防災のことは今後も考えていきたいという。
「自分にとって防災の存在は大きいですね。今の住まいが大阪なので、南海トラフのことはよく考えます。自宅が浸水域に含まれていることもあって、真剣に向き合わないといけないと思っています」

二人のように、日本の都市計画にもっと地学の視点を取り入れることができていたら、防げた被害があったのかもしれないと考えさせられた。

藤渕 団矢(ふじぶち だんや)
1999年、京都生まれ。大阪在住。現在、大阪市立大学 理学部地球学科4年生。卒業後はITの分野へ。優しくてちょっと抜けてる性格が持ち味。最近の趣味は、渋沢栄一について調べること。
奥村 淳(おくむら じゅん)
1997年、東京都生まれ。現在、東京都立大学大学院 都市環境科学研究科2年生。卒業後は観光業界へ。趣味は、都市計画・建築・歴史を感じる街歩き。大学の仲間たちとは、2か月に1回ほど歩いている。

 

この記事を書いた人

しまかもめ
しまかもめフリーライター
(株)大阪宣伝研究所にコピーライターとして勤務。その後、デザイナー、編集者、フリーペーパー営業、ネットショップ企画運営を経て、独立。神戸市在住の3児の母。