モノトーンの消化器も。
贈り物としての防災「LIFEGIFT」が非日常を日常にする


わかってはいるけど、なかなか進まない。そんな“人生のあるある”の一つに、「防災準備」がある。

なかでも防災グッズは、“自分ではあまり買わない”ものだが、“誰にとっても実用的で必要”なもの。だったら、そんな防災グッズを贈り物として届けようと始まったのが、カタログギフトサービスの「LIFEGIFT」だ。なによりの特徴は、生活に馴染むこだわったデザインのグッズを集めたこと。「引越し祝い」「新築祝い」「入学や入社祝い」「結婚祝い、結婚式の引き出物」「出産祝い」「 離れて暮らす家族とのコミュニケーションに」と、様々なシーンでの活用が想定できる。LIFEGIFTを扱うベンチャー企業「KOKUA」代表の泉勇作さんにお話を聞いた。

 

「もらっても困らないものが欲しい」の声に注目

洗練されたモノトーンカラーで開発された住宅用消火器をはじめ、持ち運べるサイズの高性能浄水器、停電を検出し自動点灯する非常用ライト、1~2人対応のコンパクトテントなど、どれも生活のシーンに馴染む、むしろ、感性を感化させるデザイン性の高い防災アイテムがLIFEGIFTでは揃っている。全部で16点だ。

2020年12月にはじまったばかりの同サービス、先行して実施したクラウドファンディングでは約360万円もの金額を集め、注目も高かった。サービスの背景にはカタログギフトの課題もあるという。
「カタログギフトの市場調査をすると、『趣味趣向にあったものが欲しい』という声があるのですが、その次に多いのが『もらっても困らないものが欲しい』です。一方でギフトを贈る方も『相手を困らせたくない』という思いがあります。僕自身は、これまでNPOを通じて防災支援をしてきましたが、防災グッズは何個あっても困らないと思っていました」(泉)

本来、ギフトは相手を思ってのものであった。が、しかし、カタログギフトが市民権を得た頃から、ギフトはリスクを負わないものへと変化した。ギフトの選択肢が増えるほど、何を選べばいいのかわからない。それならば選んでもらおうと……、原点回帰を目指すべくLIFEGIFTが始まった。「もしもの時に備えてほしい」という思いを乗せてギフトを贈るのである。

「これまで防災グッズのギフトというものは、心理的な障壁があったように感じます。例えば、新築祝いや出産祝いなんかで、災害を想起させる贈り物はどうなのかと。ですので、“防災”を推すのではなく、“気持ち”を推すためにデザイン性が必要でした」(泉)

反響は上々で、個人間での贈り物としてのみならず、企業の労働組合が社員へのメッセージとして利用したり、車の販売会社が営業時に渡す返礼品として採用している。

 

「災害支援に行って自分の力の無さを実感…」できることは?

神戸市灘区出身の泉は幼いころに阪神大震災を経験した。家は半壊し同じ神戸市の祖父母の家へと引っ越し、生活環境ががらりと変わった。家族の中には知人を亡くした人もおり、多くの人と同じように、被災は泉さんにとっても小さな傷とはならなかった。そんな中、お姉さんが被災地で活躍する救助犬に感銘をうけ、動物系の専門学校へ進学、その後、動物園に勤務した。震災を通し、自分の夢を重ねていく姿に少なからず影響を受けたと言う。

KOKUAのメンバーは、泉さんが大学時代に参加したNPOを通じて知り合った仲間が中心となっている。大学時代から被災支援を続けており、会社員になっても有給を利用して参加する。大きな災害から局地的な災害まで、これまで出向かなかった災害地はないと自負する。

「災害援助を行っていると自分の無力さを実感します。昨日まで自分と同じ生活をしていた人が、目の前で災害に遭われている。そこで自分ができることと言えば、1週間かけてガレキを移動させるくらい。大きな災害でしたらメディアの報道も続き関心が継続される。ですが、農村での被害はそうならない。次第に何ができるかと考えるようになりました」(泉)

防災の啓蒙には長く時間が必要であり、そうであれば“意識せずにできる防災の仕組み”をつくること泉さんは目指す。

「防災という言葉を使わずに、自然と家族や地域がその準備を進めている状態が良いと思います」

ギフトで解決する“自然体”での防災。カタログギフトには「あなたの無事が、いちばん大事。」と記されている。

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にちにち編集部
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「にちにち」には、「日常より非日常、非日常より日常」という想いが込められており、日常も非日常も、暮らしが豊かになるようなアイデアを提案させてください。