椿山家の優勝丼
【料理人・守永江里の名もなき料理】


料理名がつけられておらず、ごく普通に家庭の食卓に並ぶ『名もなき料理』を研究しているのが、山口県出身の料理人・守永江里さん。好きなものを組み合わせただけの家庭料理。そんな名もなき料理にあえて、名前をつけるのも楽しそう。今回は「椿山家の優勝丼」をご紹介。

非日常にはいつもの食材が手元にない。そんな時に、ありもののなかでどう料理するか。思考を柔らかくする料理記事です。

[名もなき料理とは]

椿山さんのおはなし。椿山さんは二人の娘さんがいらっしゃいます。“ 椿山家の優勝丼 ” は、現在大学生の娘さんが小学生の頃から食べていたお料理です。

優勝丼は、娘さんからリクエストがきたタイミングで食卓に出ます。それは、運動会や試験など、勝負ごとがある前夜だそうです。

「これは娘の中の優勝丼。サーモンとアボカドが好きなんだって。私や下の娘は、マグロの方が好きだから、刺身の種類を変えてるよ。それぞれの趣味に合わせて作るから、いろんな優勝丼があるよ。この組み合わせが丼の上で“優勝”してるみたい。サーモンとアボカドの組み合わせは、上の子の場合の『優勝丼』。ちなみに、正式名称は『優勝の優勝丼』らしいよ。丼の上ですでに優勝していて、明日も優勝できるから。と娘は言ってたね」

お店の料理は名前を見て注文しますが、家庭料理には名前のないものがほとんどです。あるものでパパッと作ったから。みんなの好きなものを組み合わせただけだから。

私の母親にこの料理名何?って聞くと「◯◯もどき、かな。」といつも答えていました。名前のある料理にちょっと工夫が加わったもので、なんとも言えない料理って、家庭ではよくありますよね。そんな名もなき料理に、自由な発想で料理名をつけるのも家庭料理の楽しみ方の一つかもしれません。

椿山家の(長女さんの)優勝丼。サーモンとアボカドはお決まり。たれは、和風の甘辛味にしたり、コチュジャン風味にしたり、その時の気分で変えても美味しいそうです。今回はあっさり食べられるニラ醤油でご紹介。

【材料】1人前
・アボカド ‥ 1/2個
・サーモン ‥ 80g
・焼き海苔 ‥ 適量
・にら ‥ 2本
・濃口醤油 ‥ 大さじ1
・白ご飯 ‥ お好み量

【作り方】
(1) にらを小口切りにし、醤油に浸しておく。

(2) 海苔をちぎって、ご飯の上に散らす。

(3) アボカドとサーモンを7mm厚さくらいにスライスする。

(4) ③を②の上にのせ、①のにら醤油をかけて完成。

名もなき料理を取材していると、家庭料理のいろんな角度からの楽しみ方を発見します。何気なく、料理をして食べているけれど、そんな習慣に楽しみを見出せたら、小さな幸せが重なって毎日が楽しくなりそうです。

私の優勝丼はどんな具だろう、あの人に食べてもらう優勝丼はどんな味付けだろう。

『次回は中島家のごちゃだきをご紹介します』

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この記事を書いた人

もりえり。
もりえり。料理人
鎌倉市在住の料理人です。『もりえり。』と呼ばれています。
数店舗の日本料理店で調理を学びましたが幼少期より母親に教えてもらった愛のある料理が学びの基盤です。

苦手なことは、言葉で想いを伝えること。
得意なことは、料理で想いを伝えること。

趣味は料理以外にフットサル、釣り、スケボー、寝ることです。