もしもの時にあってよかった〜蛍光色のウエアに萌えた記憶〜
【三沢真実のキャンプのある暮らし】


「キャンプのある暮らし」をコンセプトに活動するクリエイターズユニットCAMMOC代表・三沢真実さん。デザイナーかつキャンパー、旅人、そして、小学生男子の母もこなす彼女が“遊び心の大切さ”を非日常感溢れる蛍光色のウエアを例に語りました。

息子5歳の冬

私と息子はリフト終了時刻のギリギリまで滑って駐車場に戻り、車の荷室でだらだらと着替えていると、辺りは薄暗くなりはじめ、だだっ広い駐車場には、うちとだいぶ離れたところにもう1台……と、寂しげな雰囲気になり始めていた。

今から4時間のドライブかぁー「じゃあ、ここで夕ご飯にしちゃいますかー」と、私はパパッと雪上レストランを作った。
簡易的に並べた椅子とコンロがなかなかいい。

5分で完成雪上レストラン

 

小さい頃、何度か家族でスキー旅行に行った。
大学生になって何度か友達とお泊りスノーボードへ行った。
そのどれもが、ペンションやホテルに泊まる特別パッケージのイメージだった。

社会人になってちょっと奮発してスノーボードの板を買い、その板に恥じないよう上手になりたくて、スノーボードショプが顧客向けに開催している練習会に参加してみた。

参加者は早朝都内の指定された駅に集合し、何台かの車に別れてぎゅうぎゅうに乗り合い、ゲレンデに着くと粉雪舞う駐車場で着替え、ひたすら滑り、リフト終了時刻になるとまた寒空の下着替え、帰る!お昼ご飯はレストランを利用せずにおにぎりを持参している人もいた。

……衝撃的だった
な、なんて体育会系な!!萌えるじゃないか…(笑)
ウィンタースポーツが特別パッケージじゃなくても出来るんだって初めて知った。何より知らない世界を知った気分になってワクワクした。

春先にはゲレンデでバーベキューイベントがあると聞いて行ってみた。
その場には総勢30名ぐらいいただろうか、同年代の若者から、自分の両親よりも年上だと見受けられる人達まで、ゲレンデに到着するや否や、凄い勢いで数本滑ったかと思うと、その次は雪の上で肉をジュージュー焼き頬張っている!しかも皆んなめちゃめちゃ派手なウェアーを着て。(当時は蛍光色のウエアーが流行っていた)

……またまた衝撃を受けた。な、なんて全力な遊びを!!
そしてこのギャップ、萌えるじゃないか……(笑)
ってか、こんなに楽しいことがあるんだって感動して、そこに自分がいることにドキドキした。

社会人になりたての私。大人っていいなって思った。自分も蛍光ピンクのウェアーとか着たくなった(笑)着なかったけどね。
そして、人生はまだまだ楽しくなる気がした。

世の中には、楽しむことに貪欲な大人が沢山いる。子供よりよっぽどあの手この手を使って楽しもうとしているんじゃないかっていうトムソーヤ達。

 

あれから20年ぐらい。気が付いたら私の周りはそんな人達ばかりになっていて……いや、むしろ紛れもなく自分もその一味だね。
おめでとう!いい歳して心は蛍光ピンク。しかも子供も道連れに(笑)

息子と2人、雪上レストランでチキンラーメンを食べながら、ふとあの時受けた衝撃を思い出し、私もまだまだ楽しめるなと思った。

 

雪中キャンプの夜

さて「雪の上」でのBBQやチキンラーメンと、「瓦礫の中」での非常食を一緒にしては、あまりにも不謹慎だと怒られることを承知の上で敢えて語る。

いつだって笑える訳が無い。手には何1つ持っていないかもしれない。でも、いつかの雪の中で炊いた火の暖かさや、笑い合った笑顔の温もりを知っていれば、その記憶は心に火種として残り、もしも一本のロウソクを手に入れたら、マッチがなかったとしてもそこに明かりを灯すことができるだろう。

例えば、私は毎日がキャンプのような暮らしの中に生きている者だが、ランタンの灯りだけで過ごす夜や、小さなバーナーで作るご飯、焚き火でとる暖などが大好きだ。目の前に全てが揃っていれば、敢えてそんな面倒臭いことはしなくても良いかも知れないけど、「やってみると意外とイケるね」という感覚が癖になるし、その可能性を突き詰めたくもなる。
もし、あなたがランタンの灯りだけで夜を過ごしたことがなかったら、初めて過ごすランタンの夜は心で温め続けたくなる楽しい思い出になるよう、何もない週末に“遊びながら”試して欲しい。それは非日常の中で“遊びを紡ぎ出す感覚”や、“冒険の記憶”となって、もしもの時もきっと力になってくれるはずだから。

 

因みに私は東京産まれの東京育ちで、私にとって「雪」は非日常的な存在である。
子供の頃家族で出掛けたスキー旅行の思い出は宝物、ガチ滑りする為だけのスノーボード練習会は私の確実な実力になり、トムソーヤBBQで出会った大人達の笑顔には今でもそそのかされ続けている。おかげで私にとって「雪」は沢山の可能性を秘めた魅力的なもの。そうして雪の楽しさを知ることで、楽しみたいなら同居する雪の脅威も知らなければならないと思ようになり、学びも求めた。

夕暮れの雪上レストランは、寒さの中で暖を味わう悦を知り、インスタント食品をご馳走にする魔法も手に入れた私の遊びの賜物。
非日常に……萌えるじゃないかと思ったらそれがチャンス(笑)
いい歳した大人になっても蛍光色の心を持って全力で遊ぶことをオススメする。

雪上ピクニック

この記事を書いた人

三沢 真実
三沢 真実アウトドアクリエーターズユニットCAMMOC代表/ディスプレーデザイナー・キャンプコーディネーター
「キャンプのある暮らし」をコンセプトに心地の良いライフスタイルの発信やコーディネートを行う。キャンプ歴16年、息子Aliが4歳の時にキャンプ×車中泊で日本一周の旅をはじめたパワフルママキャンパー。キャンプで防災する有効性をサスティナブルな視点と共に注目し「SDGs防災キャンプ」を提唱。破棄される運命のロスフラワーを救出するフラワーサイクリストとしても活動中。
旅することが日常であれば、息子を学校へ送り出すことは非日常だろうか。日も非もない時空を泳ぐような暮らしに憧れる私の楽しみや妄想、失敗談などを綴っていきます。ププッと笑いながらお付き合いいただけましたら幸いです。