「空想力」マイルの貯め方
【三沢真実のキャンプのある暮らし】


息子と共に日本一周キャンプ旅やニュージーランドキャンプ旅などをしてきた旅するパワフルママキャンパー三沢真実が、ステイホームを経て見つけた超絶楽しいハイブリッドで新しい旅のカタチとは。

サンダル効果

この間、満月の綺麗な夜に息子と2人で「お月見に行こう~」と、部屋着とサンダルのまま家を出た。

近所の自動販売機でそれぞれ好きなジュースを買い(息子は普段、私に却下される大容量のペプシ缶を買ってもらってご満悦)それから近くの生垣に座って乾杯し、何故月は満ち欠けするのか? はたまた死んだ人は星になるのか? なんて話を空を眺めながらしばらくして、私たちはとってもホクホクした気持ちになった。

その日の大きく綺麗な満月は、家から着の身着のまま出て、毎日通り過ぎる場所に腰掛けて眺めたからこそ、私達にとって特別な存在となった気がした。

青い鳥症候群

「べんきょう」という言葉は睡眠術だよね。お母さんも子供の頃そう思ってたよ。

小学1年生の息子は、自宅住所から指定される公立の小学校に通っている。校長先生も、担任の先生もとても親切丁寧で、環境も申し分ない、良い学校だ。しかし、至って普通の学校。

そんな「普通」であることに不満を言ったらバチが当たりそうだか、私はたまに知人から耳にする、全てを生徒の自主性に任せる学校とか、たまにテレビで目にする、超ド級の自然豊かな学校とか、はたまたインターナショナルスクールとか、そういった特色のある学校に通う子供達には、同じ1年生なのに余りにも違う輝いた毎日があるように思えて…。息子がそこへ行くことが出来たらどんなにいいだろうかとか、どんな人生になるのだろうかとか、むしろ行かせてあげられなくてごめんなさいとか、、、その辺りのことを考えると心がモヤっとしていた。

しかし友達に、そんなことをボヤいたら「早かれ遅かれ“社会のみんなと同じことをする”という経験をしなければならない時がくるんだから…」という言葉が返ってきて、そのシンプルな一言に「そっか、今この環境も彼にとって学びの時だね」と妙に納得したのだった(単純)。

2018年山梨県

私たちは旅する親子。息子は旅先で「小さい時からこんな体験が出来るなんて幸せねぇ」と声をかけていただくことが多いのだか、彼は住所で決められた学校へ行くように、この母のもとに産まれたがために旅もする。だから、いつも返事に困っているけど、まあ悪くはないと思ってはいるようである。

私はある意味不器用で、「旅」という口実がなければ作れない時間や、リセット出来ない気持ちがあるから、旅をする。最近は旅をしていないけど、その分、お月見然り他の楽しみ方を見つけられるようになってきた。お陰で少し器用になったのだろうか?

新しい旅のカタチ

少し前、ステイホーム真っただ中の時期に、私たち2人は公園へ行ってタクシーごっこをした。普段は、ブランコや滑り台など一通り遊具に乗って、ボールを蹴ったりして走り回ると“私が”疲れて×飽きて「そろそろ帰ろぉー」と息子を連れ帰るのだが、その日は2人でタクシーごっこにハマって、飽きずにしばらく盛り上がった。

よく公園にある、イモムシみたいなやつに3人乗れて、前後に動く遊具(あれ、なんて名前なんだろう?)あれが魔法のタクシーになるのである!

これはその日の写真  イモムシみたいな乗り物が写るように撮っておけば良かった…

それはどこでも好きなところに連れて行ってくれる。

車モードとか、飛行機モードとかに切り替わって、途中で寄り道したり、機内食も出してくれたりする凄く楽しいタクシーで、何より運転手のさじ加減一つで、世界中の何処でもすぐ着く!!(笑)たまに凄く揺れたり突然止まったり、トラブルも多いのだけど、そんな魔法のタクシーで、今年の初め一緒に旅したニュージーランドや、お気に入りのキャンプ場のある長瀞へも連れて行ってもらった。こんなご時勢リモートやバーチャルもいいけど、「空想」って楽しみ方もかなりいいなと思った休日だった。

2019年カーフェリーで大阪から福岡へ

もし、赤毛のアンのように、もの凄い空想力を持っていれば、永遠と空想ごっこができちゃうかも知れないけど、凡人が空想力、想像力を育むには、ある程度本物に触れる経験が肥やしになって楽しみ方を膨らませてくれるのかも知れない。

例えば飛行機に乗り遅れたり!(汗)ヒッチハイクで出会った少年達とキャンプしたり(楽)激しい山のクネクネ道で車酔いし続けたり(涙)毎日1つ、どこかでアイスクリームを買って食べることを楽しみにしたり(喜)

これまで私たちの旅で起こったあんなことも、こんなことも、辛かったことも、面白おかしいネタとなって次々飛び出すタクシーは、旅の武勇伝(笑)を懐かしく思い出させ、そこへ更に重ねたストーリーが私達を愉快な世界に誘った。

2018年 沖縄行きの飛行機に乗り遅れ お詫びに乗る予定だった飛行機のフィギアを購入

2018年 なんとか到着した夕暮れ前の沖縄

青い鳥は探さない

結果論ではあるけど、私には旅もステイホームも、良い経験であったと言える。どちらがどれだけ大事かではなくて、何処かにある何かではなくて、今大切なものを大切に思う。今楽しいことを楽しむ。今悲しいことを悲しむ。その臨場感が心に響くと、それは掛け替えのない存在になる。

息子が赤道の向こう側で、勇気を振り絞って話しかけたあの子も、学校で隣の席になれて嬉しいあの子も。七色の光を放ち地平線に沈む太陽も、毎日通る場所から見上げた満月も。

我が家の旅仲間のMacProくん

これからは、益々価値を持つであろう「リアルに見て、触れて、感じること」が、新しく迎えた「リモート、バーチャル」の世界と融合したら、超絶楽しいハイブリッドな旅ができそうだ。

次は魔法タクシーに乗ってどこへいこうか。「空想力」というマイルを貯めて。

この記事を書いた人

三沢 真実
三沢 真実アウトドアクリエーターズユニットCAMMOC代表/ディスプレーデザイナー・キャンプコーディネーター
「キャンプのある暮らし」をコンセプトに心地の良いライフスタイルの発信やコーディネートを行う。キャンプ歴16年、息子Aliが4歳の時にキャンプ×車中泊で日本一周の旅をはじめたパワフルママキャンパー。キャンプで防災する有効性をサスティナブルな視点と共に注目し「SDGs防災キャンプ」を提唱。破棄される運命のロスフラワーを救出するフラワーサイクリストとしても活動中。
旅することが日常であれば、息子を学校へ送り出すことは非日常だろうか。日も非もない時空を泳ぐような暮らしに憧れる私の楽しみや妄想、失敗談などを綴っていきます。ププッと笑いながらお付き合いいただけましたら幸いです。