林家のカレーのたまご【料理人・守永江里の名もなき料理】


料理名がつけられておらず、ごく普通に家庭の食卓に並ぶ『名もなき料理』を研究しているのが、山口県出身の料理人・守永江里さん。今回は、子供の頃にみんなで同じものを食べる日常が贅沢だったと感じた「林家のカレーのたまご」をご紹介。

非日常にはいつもの食材が手元にない。そんな時に、ありもののなかでどう料理するか。思考を柔らかくする料理記事です。

[名もなき料理とは]

「そういえばうちのカレーには、卵サンドのたまごをのっけるんだよ。子供の時からずっと食べてる。」と林さんは教えてくれました。

卵サンドのたまごといえば、ゆで卵を作って、潰して、マヨネーズ等で味付けをしたものが思いつきますが、温玉や生卵と違って、カレーに乗せるには少々手間がかかります。どうして林家のカレーのたまごは、卵サンドのたまごなのか、はじめに作られた林さんのお母様にお話を伺うと、お子様3人兄弟が卵もマヨネーズも好きだし、栄養にもなるかと思ってやり始め、皆よく食べてくれたのでそれが我が家の普通になった。ということでした。

みんなが好きなもので、みんなの為になるものを作り続けて、それが家庭に定着する。名もなき料理の作り手さんは、“ 家庭の普通 ” をこのように作り出している共通点があります。

そして、子供の時から食べている林さんからもお話を伺いました。「辛いカレーの時に、『これをかければ辛くなくなるから』と言われて食べていたよ。卵を潰すのは子供の仕事だった。楽しかった気がする。子供ってそういうの好きだから。今でも妻が、たまにこのたまごを作ってくれるよ。息子はマヨネーズが苦手だからあんまり食べないんだけど、出てくると特別感があってやっぱり嬉しい。実家でもまだ両親は食べているみたい。」

私も作ってみました。マヨネーズの独特な風味や酸味は、カレーと一緒に食べることで消え、辛さを控えさせるとともに、カレーのコクが増しました!これは想像以上の美味しさ!

林家では、器にこのカレーのたまごが用意されていて、各々好きな時に好きなだけかけて食べるそうです。なんだか楽しそうです。このカレーのたまごは、ご飯を家族みんなで食べていたから生まれたアイデアだと思います。みんなで同じものを食べられるようにと。

私は4人兄妹で、いつも賑やかな食卓でした。今は兄妹みんな、私も含め実家を離れて暮らしています。1人で好きなものを食べるのも気楽ですが、みんなで囲んだあの食卓が懐かしくなりました。

塩などで味付けはしません。刻んだゆで卵にマヨネーズを混ぜるだけです。とってもシンプルなこの卵が、カレーの味を邪魔せず美味しくしてくれます。

【 材料 】
・カレーライス
・たまご
・マヨネーズ

【 作り方 】
(1)固ゆで卵を作る。
(2)ゆで卵を刻んでボウルに入れ、マヨネーズを混ぜる。
(3)カレーライスに、②を乗せて完成。

みんなで同じものを食べる。そんな時間が子供の頃は日常だったのかと今では贅沢に感じます。大人になった私は辛いカレーライスが好きですが、この林家のカレーのたまごをかけたコクのあるカレーもたまに食べたいです。

次回は『村上家のしかくい汁』をご紹介します

この記事を書いた人

もりえり。
もりえり。料理人
鎌倉市在住の料理人です。『もりえり。』と呼ばれています。
数店舗の日本料理店で調理を学びましたが幼少期より母親に教えてもらった愛のある料理が学びの基盤です。

苦手なことは、言葉で想いを伝えること。
得意なことは、料理で想いを伝えること。

趣味は料理以外にフットサル、釣り、スケボー、寝ることです。