岸家のお好み焼き
【料理人・守永江里の名もなき料理】


料理名がつけられておらず、ごく普通に家庭の食卓に並ぶ『名もなき料理』を研究しているのが、山口県出身の料理人・守永江里さん。今回は「岸家のお好み焼き」をご紹介。

非日常にはいつもの食材が手元にない。そんな時に、ありもののなかでどう料理するか。思考を柔らかくする料理記事です。

[名もなき料理とは]

「うちのお好み焼きは、私のおばあちゃんが作っていたものを真似して作っているんだけど、おばあちゃんのように美味しくは作れないんだよねぇ。表面がカリッとしていてとても美味しかった。」義母はそう教えてくれました。夫も子供の時からこれを食べてきたそうです。

「うちのお好み焼き? 普通じゃない? 俺は特別好きって感じでもなかったよ。美味しいな~って思って食べてたけど」夫はそう言っていました。どんなお好み焼きか聞いてみると、具材は、キャベツ・ニラ・ひき肉。平べったくてチヂミみたいなお好み焼き。ということで全然普通じゃない!笑

このお好み焼きを美味しく作ってくれるおばあさんは八百屋を営んでおりました。野菜の目利きや調理はさすがで、作られるお野菜料理は全部美味しかったそうです。とってもシンプルな具材で作る岸家のお好み焼きですが甘いキャベツ、香りの良いニラで作るからまた余計に美味しかったことでしょう。表面はカリッと、中はふわっとしたお好み焼き。

私もまだまだ練習が足りませんが、ひいお婆さんの味を想像して、作り続けてみたいと思います。お話を聞いて初めて作った時は、大きめのフライパンで目一杯広げて焼いたつもりですが、それでもぺろっと2枚食べられちゃいました。これは美味しい。普通のお好み焼きよりも好きかも。塩加減がうまくいくと、ソースをつけなくても十分美味しいです。
皆さんも平べったくて食べやすい岸家のお好み焼きをぜひ作ってみてくださいね。

ソースやマヨネーズはお好みで。私は何もつけず、そのまま食べちゃいます。育ち盛りのお子さんにはおやつにも喜ばれそう。

【材料】20cm 1枚分
・キャベツ 160g(1/6個)
・ニラ 3束
・長芋 100g
・豚ひき肉 100g
・卵 1個
・小麦粉 大さじ3
・かつお出汁 60ml
・塩 小さじ1/2
・胡椒 適量
・油 適量

【 作り方 】
(1) キャベツは細切り、ニラは1cm幅くらいに切る。長芋はすりおろす。
(2) ボウルに卵を入れ、溶いて、かつお出汁と合わせておく。
(3) 別のボウルにキャベツ、ニラ、ひき肉、長芋を入れて混ぜておく。小麦粉を入れ、満遍なく混ぜる。②の卵液を加えて、塩、胡椒も入れてよく混ぜる。
(4) フライパンに油を入れて熱し、③を入れ、丸く形を整える。押しながら丸く形を整える。強火で1分ほど焼いて焼き目をつけたら蓋をして弱火で6分焼く。
(5) ひっくり返して、中火で3分焼いたら完成。

名もなき料理の共通点は、見た目がとてもシンプルで肩の力を抜いて食べられる安心感をまとっている。作り方もシンプルなので、一度作れば身につく。

見たことも食べたこともないものなので、聞いたときは味が想像できないけれど作って食べてみると初めての美味しい味に感動する。そしてまた食べたくなる。取材していて、そんな名もなき料理にたくさん出会えました。

おかげ様で我が家の家庭料理の幅も広がり、料理人として、料理に向かう無駄な力もなくなった気がします。人に食べてもらうための料理に必要な軸が見え始め、とても自然に料理ができるようになってきました。

次回は『ぶんちゃんちのピーマンの肉詰め』をご紹介します

この記事を書いた人

もりえり。
もりえり。料理人
鎌倉市在住の料理人です。『もりえり。』と呼ばれています。
数店舗の日本料理店で調理を学びましたが幼少期より母親に教えてもらった愛のある料理が学びの基盤です。

苦手なことは、言葉で想いを伝えること。
得意なことは、料理で想いを伝えること。

趣味は料理以外にフットサル、釣り、スケボー、寝ることです。