ハラペコと凹んだココロに効くポリパン®︎
【東京の小さなパン屋カフェから】


つくる人たちを笑顔にする「ポリパン®︎」は、ポリ袋で作るパンのこと。天然酵母パン工房&ナチュラルフードスクール「happyDELI」主宰の梶晶子さんが考案したパン作りです。東日本大震災後、ポリ袋・フライパン・カセットコンロをかついで、東北各地をまわった梶さん。被災地で1000人の方々と、パンを通して触れ合ったといいます。そんな梶さんによる、パンと防災に関するコラム。

はじめまして、happyDELI(幸せをお届け)の梶晶子と申します。2003年末より東京で小さなパン屋カフェを営んでいます。パン作りも教えています。昔から、喫茶店でボーッと過ごすのが大好きで、喫茶店を開くつもりで脱サラしたら、なぜかパンがご好評をいただき、いつの間にかパンが仕事の中心になっています。

15年ほど前、地元のコミュニティスクールからパンレッスンのご依頼を受けて行ったところ、参加人数が多く道具が足りなくなった経験から、ポリパン®︎を生み出しました。ポリパン®︎は、ポリ袋に材料をいれて、シャカシャカ振って生地をつくる手法です。とても分散性がいいので、捏ねなくてもよい生地ができます。

そのまま発酵させて、成形して焼くのですが、これまた大好きなキャンプの経験からフライパンでパンを焼くことと組み合わせたら、誰でもどこでもできる、そして失敗しない、そしてやってみるとなぜか笑顔になってしまう「笑顔の魔法ポリパン」ができあがりました。ただ、ポリ袋に材料をいれるだけではなく、しっかりと振ることが特徴です。

パン教室のレッスンでは手ごねをすることが多いですが、ほとんどの受講生は自宅でパン作りをする時には、ポリパンで仕込んでいるようです。材料を測り始めて、生地の完成まで5分もかからないし、手軽で汚れ物がないので、「ポリパンだから、日々のパン作りが続けられる」とよく言われます。

東日本大震災後、自分にできることはなにか?と考え、2012年春からポリ袋とフライパンとカセットコンロをかついで、東北各地をまわりました。避難所や仮設住宅、集会所、児童館、保育所など。2016年頃までに50回以上ポリパンをさせていただきました。被災地で参加してくださった方の人数1000人を超えています。

その中で驚いたのが、例外なく、みなさん笑顔になってしまうことです。きゃっきゃと声をあげて、子供も高齢者の方も、老若男女「あーこんなに楽しい思いをしたのはひさしぶり」と笑顔になります。

ある時、震災のPTSDで1人で学校に通えなくなってしまった女の子がいました。ポリパンが上手に焼けてまわりの人にほめられたら、翌日から学校に通うことができるようになったそうです。びっくりしたお母さんが、自分もポリパンを教えられるように養成講座に通い始めるということもありました。そのお母さんも、震災後のストレスから体調をくずされていましたが、ポリパンに熱中すると同時にみるみるうちに元気になられて、こちらがびっくりしたこともありました。

手軽で便利で美味しい。というのは、日常でも非常時にとても大切なことですが、もう一つ大切なことは、心を支える。ということではないかな?と、震災後の支援を通して感じています。ポリパンは心にも働きかけるのではないか?と感じています。気仙沼の方が『笑顔の魔法』とポリパン にキャッチフレーズをつけてくれました。そこからわかるように、一緒にパン作りをする人を笑顔にしてしまう力がポリパンにはあります。まさに凹んだお腹にも凹んだ心にも効く、ポリパンです。

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この記事を書いた人

梶晶子
梶晶子
ポリ袋で作るパン、ポリパン®︎考案者。天然酵母パン工房&ナチュラルフードスクール「happyDELI」主宰。

2004年、東京・三鷹で天然酵母パンとヘルシースープの店を開店。店舗販売、通信販売、移動販売、卸売の傍ら、天然酵母パン教室をスタートさせ、人気を呼ぶ。2012年より東京・西荻窪に拠点を移しパン教室をメインに活動中。

「ポリパン(ポリ袋でつくるパン)」を通じた東北支援活動も積極的に行っており、「東北応援ハッピーデリプロジェクト 笑顔を届けよう!」と題して、被災地各地で定期的にパン教室を開いている。