料理名がつけられておらず、ごく普通に家庭の食卓に並ぶ『名もなき料理』を研究しているのが、山口県出身の料理人・守永江里さん。今回は「お誕生日会のにんにくの芽炒め」をご紹介。
非日常にはいつもの食材が手元にない。そんな時に、ありもののなかでどう料理するか。思考を柔らかくする料理記事です。
[名もなき料理とは]
お誕生日会のにんにくの芽炒め
先日、義実家で娘の誕生日会をしてもらいました。お寿司やトンカツなど豪勢なお料理がずらっと並んだ食卓を見て、家族でお祝いする誕生日なんてあまりにも久しぶりで、その華やかさに少し懐かしい感じもしました。
そこに一品、一際シンプルな料理がありました。それはにんにくの芽の炒め物。にんにくの芽というと中華料理屋さんで、お肉と濃い味付けで合わせられているイメージですが、それに比べるとさらっとした印象の色をしています。
まだ料理中でキッチンに立っている義母に、「これは何ですか?」と聞いてみると、「にんにくの芽とベーコンを炒めたもの。ちょっと味見してみる?」と箸と小皿を渡してくれました。
一口食べると、にんにくの香りが口いっぱいに広がり、シャキッとした歯ごたえがたまらなく、もう一口!とフライングの味見なのにどんどん箸をすすめてしまいそうになりました。味付けを聞くと、塩・胡椒・醤油のみだといいます。にんにくの芽の甘味や風味、素材の味をシンプルな味付けで楽しんだのは初めてでした。
「簡単だからやってみてね」と義母は言いますが、こういう簡単な料理こそ難しいんですよね。今まで手料理を聞いて真似ていますが、毎度義母ほどはおいしくは作れないのです。
にんにくの芽とベーコン。ありそうでないこの料理のルーツは、義母が以前勤めていた夜はスナックになるという喫茶店。そのお店のお通しで作っていた一品だそうです。今では義弟のお気に入り。これなら毎日食べられる、と言います。歯ごたえ担当でも、臭み消し担当でもない、にんにくの芽が主役の料理。またひとつ、名もなき料理に出会えました。SNSに載ることもなく、人に話されることもなく、ごくごく日常に寄り添っている料理。人目にでることのないけれど、家族の心も体も満たし、密かに活躍している名もなき料理の潜在能力に惹かれます。
『お誕生日会のにんにくの芽の炒め物』の作り方
コツは、手早くサッと。と教えてもらいました。試してみると納得、時間をかけ過ぎてしまうとにんにくの芽の香りがとんでしまいます。私は5回目くらいでやっと義母の味に近づきました(笑)分量は適量ですが、ベーコンに塩味があるので少なめにしておいて、最後に調節するとうまくいきます。
【 材料 】
・にんにくの芽
・ベーコン
・塩
・胡椒
・醤油
・油
【 作り方 】
(1) にんにくの芽は4cm幅、ベーコンは2cm幅くらいに切る。
(2) フライパンに油を熱し、中火でにんにくの芽を炒める。あまり動かし過ぎずに、焼き色をつけるようにする。
(3) にんにくの芽に焼き色がついたら、塩、こしょうをふり、味を馴染ませたらフライパンの端に寄せ、ベーコンを入れる。
(4) ベーコンにも焼き色がついたら、醤油を鍋肌から入れ、さっと和えたら完成。
『お誕生日会のにんにくの芽炒め』を作り終えて
義母の手作りトンカツもとてもおいしくて、まだ前歯しかない娘も頬張っていました(笑)。ちなみに私は、出前のお寿司が結構好きです。時間がたった酢飯がおにぎりのようにもっちりとしていておいしいなぁと思うのです。
次回は『伊織さんの伯母さんとこの朝ごはん』をご紹介します
この記事を書いた人
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鎌倉市在住の料理人です。『もりえり。』と呼ばれています。
数店舗の日本料理店で調理を学びましたが幼少期より母親に教えてもらった愛のある料理が学びの基盤です。
苦手なことは、言葉で想いを伝えること。
得意なことは、料理で想いを伝えること。
趣味は料理以外にフットサル、釣り、スケボー、寝ることです。
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