雄太さんの無水蒸し
【料理人・守永江里の名もなき料理】


料理名がつけられておらず、ごく普通に家庭の食卓に並ぶ『名もなき料理』を研究しているのが、山口県出身の料理人・守永江里さん。今回は「雄太さんの無水蒸し」をご紹介。

非日常にはいつもの食材が手元にない。そんな時に、ありもののなかでどう料理するか。思考を柔らかくする料理記事です。

[名もなき料理とは]

雄太さんとトマスちゃんは2人暮らしをしています。とはいえ、共働きの2人が家で顔を合わせるのは朝10分、夜は長くて4時間くらい。先に帰宅する雄太さんが夕食を作ります。冷蔵庫の中を見て、「今日は何作ろうかな?」と考えるとプライベートのスイッチが入り、良い息抜きになるそうです。

そうやって、ありもの食材で作られた料理の一つが、「無水蒸し」。

「仕事から帰ってきて、彼女が帰宅するまでもう時間がない!って時に『今日は鍋とご飯を炊くだけにしよう』って思って。なるべく早く作りたいから、火の通りの早いアルミ鍋を使おうと。具材はちょうどたくさんあった白菜、そして豚バラ肉。いつものミルフィーユ鍋にしてもいいけれど、味付けはいつもよりちょっと変化をつけたいなと思って、塩昆布を入れてみたよ。とにかく、早く作らないといけない状況から生まれた料理だね。気に入ってもらえてよかった。」

トマスちゃんはそんな雄太さんの料理に身も心も助けられていると言います。

「一人暮らしをしている時、仕事終わりに夕食作りをする大変さを感じていたので、雄太さんには無理しない程度でと言っていますが、帰宅時間に合わせて温かいご飯を用意してくれて、いつも本当に感謝しています。『今日はこれ食べたい』とか『今日の晩ご飯何?』とか言うことで、プレッシャーをかけたり作ってもらうのが当たり前だと思いたくはないので、何も聞きません。お腹をペコペコにしながらも『今日のご飯何かな』と密かに考えるのが、帰宅までの楽しみの時間です。」

1日で一緒にいられる時間はわずかだけど、「これは何を使っているの?」とか「どんな味付けなの?」といった会話をするのが楽しいというお2人。多くは語らずとも、同じ味を共有し、会話することでなんとなく相手の気分がわかったり、自分を伝えられたりしているのではないでしょうか。美味しいごはんを囲めば少しの時間でも、きちんとコミュニケーションをとることができるのですね。

ちなみに雄太さんが好きな、トマスちゃんの手料理はエスニック料理だそうです^^。

無水鍋をお持ちでない方でも、手軽に美味しく作ることができます。具材に火がとった後、しばらくそのまま寝かせておくと、白菜がしんなりして味が馴染みます。
【 材料 】
・白菜 1/4個
・豚バラ肉 150g
・塩昆布 20g
・料理酒 適量
・いりごま 適量

【 作り方 】
(1) 白菜、豚肉を食べやすい大きさに切る。
(2) 鍋に白菜、豚肉、塩昆布の順に入れ、料理酒をひと回しして蓋をする。
(3) 中火にかける。白菜から水分が出て、ぐつぐつと煮立ってきたら弱火にする。濡らした布(薄手のタオルや手拭いなど)を鍋とふたの間に置き、密閉する。白菜が煮えて、豚肉に火が通るまでじっくり加熱する。
(4) 炒りごまをふって完成。

楽しく料理をしている人の裏には楽しく料理をさせてくれる人がいます。考える時も、作る時も、食べる時も、料理はみんなで楽しむことが出来ますね。

『次回は野呂家の味ごはんのおかゆがけ』をご紹介します

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この記事を書いた人

もりえり。
もりえり。料理人
鎌倉市在住の料理人です。『もりえり。』と呼ばれています。
数店舗の日本料理店で調理を学びましたが幼少期より母親に教えてもらった愛のある料理が学びの基盤です。

苦手なことは、言葉で想いを伝えること。
得意なことは、料理で想いを伝えること。

趣味は料理以外にフットサル、釣り、スケボー、寝ることです。