さわが好きなお弁当の卵のやつ
【料理人・守永江里の名もなき料理】


料理名がつけられておらず、ごく普通に家庭の食卓に並ぶ『名もなき料理』を研究しているのが、山口県出身の料理人・守永江里さん。今回は「さわが好きなお弁当の卵のやつ」をご紹介。

非日常にはいつもの食材が手元にない。そんな時に、ありもののなかでどう料理するか。思考を柔らかくする料理記事です。

[名もなき料理とは]

 

高校の同級生に、さわと大谷さんという友達がいます。当時の昼休みの話をしていると、「大谷家のお弁当の卵の甘いやつが美味しかった」という話題になりました。一口もらったさわがとっても気に入ったそうです。大谷さんももちろん大好きな一品。大谷家ではお母さんに「さわが好きな卵の甘いやつ」と言うと、この料理が伝わります。枝豆とカニカマが入っていて、冷めていてもふわふわしている甘い卵。

こうやって高校生の頃のお弁当を思い出して話していると、当時のいろんなエピソードもたくさんでてきました。「クラスの女子全員で教室の後ろに集まってみんな一緒にお弁当を食べたんよ。みんな仲良くて賑やかで楽しい時間やったなぁ」とか、「食後は非常階段でカリカリ梅食べながら、友達の好きな後輩が廊下を通るのを見てた」とか、「お弁当食べた後に他のクラスに遊びに行くのも楽しかったなぁ」とか。

二人とは違う棟に教室があった私は、一緒にお弁当を食べることはなかったけれど、食後に遊びに来てもらうことはありました。手紙を持って来てくれたり、ただ話をしに来てくれたり。いつも明るい二人に元気をもらっていました。大人になるにつれ、高校生の頃のことを思い出す機会はほとんどないけれど、お弁当の話題きっかけで懐かしい思い出に浸りました。

私の高校生の頃のお弁当には黒豆の甘煮が必ず入っていました。母にお願いして、甘さ控えめで、硬めに炊いて作ってもらったものです。毎日手作りしてくれたお弁当。人が思いを込めてくれたお弁当は、食べる時もあらゆる感情が生まれます。これ昨日の残りのおかずだ!とか、いつものこれ入ってる!とか、言葉にするでもない小さな思いを飲み込みながら食べます。そうやって心が動くから、今でもふと思い出すことができ、当時の思い出まで出てくることがあるのです。

心のこもったお弁当を食べることは、昼休みの時間やその後の人生まで豊かにしてくれます。毎日母のお弁当を食べた学生時代。今になると貴重な期間だったなと思います。

彩り抜群なので、お弁当にも良いですが、大谷家では晩御飯のおかずにも作られるそうです。包丁・まな板いらずでとっても手軽に美味しい一品が出来上がりますよ。

【 材料 】
・卵 5個
・かにかま 1パック(75gくらい)
・枝豆 大さじ3くらい
・砂糖 小さじ2
・白だし 小さじ2
・油 適量

【 作り方 】

(1) ボウルに卵をほぐし、かにかまも軽くほぐしながら入れ、枝豆、砂糖、白だしも入れてよく混ぜる。
(2) フライパンに油を熱し、①を入れる。卵が半熟に固まるまでかき混ぜながら火を通す。好みの硬さになったら完成。

 

週末はサッカーの試合があったので、小学生の頃からよくお弁当を食べていました。小学生の頃は、冷凍食品のたこ焼きと、焼売を入れてもらっていました。中学生の頃のお弁当には、そぼろ・卵・絹さやのそぼろ丼。その時々でお気に入りの具がありました。

みなさんは、お弁当に何の具が入っていると嬉しいですか?

次回は『お母さんが作ってた甘酒煮』をご紹介します。

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この記事を書いた人

もりえり。
もりえり。料理人
鎌倉市在住の料理人です。『もりえり。』と呼ばれています。
数店舗の日本料理店で調理を学びましたが幼少期より母親に教えてもらった愛のある料理が学びの基盤です。

苦手なことは、言葉で想いを伝えること。
得意なことは、料理で想いを伝えること。

趣味は料理以外にフットサル、釣り、スケボー、寝ることです。