渡辺家の豚肉のバター焼き
【料理人・守永江里の名もなき料理】


料理名がつけられておらず、ごく普通に家庭の食卓に並ぶ『名もなき料理』を研究しているのが、山口県出身の料理人・守永江里さん。今回は「渡辺家の豚肉のバター焼き」をご紹介。

非日常にはいつもの食材が手元にない。そんな時に、ありもののなかでどう料理するか。思考を柔らかくする料理記事です。

[名もなき料理とは]

 

渡辺家の『豚肉のバター焼き』

職場の同僚の楓子ちゃんは、5人兄妹の末っ子です。そんな楓子ちゃんがご実家でよく食べていたという、豚肉のバター焼きを教えてもらいました。

「この料理はお父さんが作ってくれました。朝昼晩いつでも食べていました。すごくシンプルなんですが美味しくて。実家を離れた今でも自分で作って食べます。食べ慣れているからか、献立が思いつかない時、料理をする時間があまりない時などに救世主のようにぱっと頭に浮かんできて、助けてくれる一品です。」

楓子ちゃんはいつも美味しそうな手作り弁当を持って出勤しています。
ご両親がいつでも温かい手料理を食べさせてくれたおかげか、実家を離れてからも料理をすることが日常になっていると言います。

ー 楓子ちゃんのお弁当記録 ー

私も渡辺家と同じ7人家族でした。皆、思い思いに食べたいものを母にリクエストしていたので家族みんなが美味しく食べられるものを考えるのは大変だったと思います。朝は、炊飯器で炊いたご飯とお味噌汁。それだけで十分でした。お味噌汁は毎日いろんな野菜が入っていて、栄養も愛情もたっぷり。子供の時は、それが当たり前で、白いごはんに飽きたとか、市販の即席味噌汁がいいとか言ったこともありましたが。笑 どんなに簡単なものでも手料理を食べて育ったら、独立しても手料理を食べたくなります。

今日は母が忙しそうにしている、けれどそんな時はこんな料理ができるんだ。というのは印象に残るものです。帰りが遅くなったけれど、家族に栄養をとって元気でいてもらいたい、そんな思いから、蒸し野菜を作ってくれたことを覚えています。やはり、“ とにかく作る ” ことには意味があるなぁと思います。

「今思えば、人数が多いからすぐにさっと作れる料理が多かったと思います。男兄弟がたくさんいるので、白ごはんが進む料理が色々ありました。懐かしいです。」

ご両親の料理には、今だからこそ分かる手料理に込められた工夫や、気遣いがたくさんあったと楓子ちゃんは言います。言葉で表すのではなく、料理に込めたご両親の思い。時間をかけてゆっくり届くのですね。

渡辺家の『豚肉のバター焼き』の作り方

渡辺家ではロース肉で作ることが多いそうです。私は、もも肉やバラ肉などいろんなお肉でも真似させてもらいましたが、このシンプルな味付けが豚肉によく合うので美味しくできました。これ以上も以下もない、味付けです。ほかほかご飯を用意してどうぞ!

【 材料 】

・豚ロース肉
・卵

・バター
・塩
・胡椒

 

【 作り方 】

(1) 豚肉は大きければ、食べやすい大きさに切る。
(2) ①に塩、胡椒を適量まぶす。
(3) フライパンにバターを熱し、②の豚肉を焼く。
(4) 両面焼けたらお皿に取り出しておく。
(5) 豚肉を焼いたフライパンで、目玉焼きを作る。目玉焼きにも塩、胡椒で軽く味をつける。
(6) 目玉焼きが焼けたら④の豚肉の上に乗せて、完成。

渡辺家の『豚肉のバター焼き』を作り終えて

楓子ちゃんからたくさんの美味しそうなご実家の料理を教えてもらいました。渡辺家シリーズでまたご紹介させてもらいたいです♪
家族に美味しいご飯を食べてほしい、ご両親のそんな思いが第三者の私にも伝わりました。コラムを書いている私まで幸せな気持ちになります。

  次回は『真夜中の梅煮麺』をご紹介します

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この記事を書いた人

もりえり。
もりえり。料理人
鎌倉市在住の料理人です。『もりえり。』と呼ばれています。
数店舗の日本料理店で調理を学びましたが幼少期より母親に教えてもらった愛のある料理が学びの基盤です。

苦手なことは、言葉で想いを伝えること。
得意なことは、料理で想いを伝えること。

趣味は料理以外にフットサル、釣り、スケボー、寝ることです。