元木家のお雑煮
【料理人・守永江里の名もなき料理】


料理名がつけられておらず、ごく普通に家庭の食卓に並ぶ『名もなき料理』を研究しているのが、山口県出身の料理人・守永江里さん。今回は「元木家のお雑煮」をご紹介。

非日常にはいつもの食材が手元にない。そんな時に、ありもののなかでどう料理するか。思考を柔らかくする料理記事です。

[名もなき料理とは]

 

 
コロナウイルスの感染者が増え、帰省が危ぶまれた2020年の年末。鎌倉に住む元木夫妻は、東京の実家に帰らず2人で年を越すことにしました。家族みんなで集まれないけれど、おせちだけでも車で持っていくよとご両親が提案してくれ、元木さんはすかさず、「それならお雑煮も持ってきてほしい」とリクエスト。「おせちもいいけれど、僕はお正月三が日はあれしか食べないほどあのお雑煮が好きなんだ。お雑煮が美味しいからお正月はいつも楽しみ」そう教えてくれていました。

昨年のお正月はまだご結婚前で、奥さんの愛子さんは元木家のお雑煮を見たことも食べたこともありませんでした。当時初めて食べた愛子さんは「ごぼうが千切りで、他の具材も小さめで食べやすくて、とっても美味しいの!来年は教えてもらいたいなぁ」と、写真を見せつつ私に話してくれました。私も、具材が小さく切られた元木家のようなお雑煮は食べたことがなく、「お餅と一緒に食べるにはとっても食べやすくて美味しそう!いつか作り方を教わったら私にも教えて欲しいなぁ」と話しました。

それから1年が経ち、2021年の年末、夫妻は帰省することができました。元木家のお雑煮はまず30日に鶏ガラで出汁をとり、31日にお雑煮の具材を切って煮込みます。30日の朝にはお餅つき。お昼ごはんには、つきいれ餅をみんな思い思いの方法で食べます。

お父さんのご両親が山形出身ということで、あんこやきな粉だけでなく、納豆や大根おろしを絡めた食べ方も用意されているそうです。お餅のバリエーションが多く、選んで食べるのがとっても楽しそう。つきたてのお餅ということもあり、全種類食べたくなりますね。

お母さんやお姉さん、愛子さんが協力してお雑煮を作っている間、お父さんやお兄さんたちは大掃除をするそうです。これが元木家では恒例のスタイル。誰かに任せっきりにするのではなく、協力して準備をするからこそ、みんなで気持ちよく新年を迎えることができ、お正月のお料理がより楽しく食べられるんだろうなぁと思います。お兄さんが厳選し、用意される日本酒もいつも美味しいんだとか。

初めて元木家でお正月を過ごした愛子さんは「家族みんなで過ごすお正月をこれからも大切にしたい。年末やお正月に作ったお料理、掃除した場所などをマメに記録されているお母さんを見て、私も節目をきちんとしたいと思ったし、何より家族集まって賑やかに過ごした時間がとっても楽しかった」と教えてくれました。

私もこの一年、人と過ごす時間をもっと大切にしたいと思いました。今までのように気軽に友達と会えなくなっていますが、会えた時はしっかり心を通わせ、気持ちの良い時間を過ごしていきたいです。皆さんも、大切な人の笑顔をたくさん見て過ごせる一年になりますように。

 

元木家では、濃いめの味付けにしてたくさん作り、食べるときは小鍋で必要な分だけを温めて水を足したり味を調節したりしながら食べます。出汁をとるのが大変という方は、鶏がらスープの素で手軽に作ってみても美味しくできますよ。具材そのものがもつ出汁も出るので、とっても美味しいです。つきこんにゃくを入れる年もあるそうですよ。美味しそうですね。

 
【 材料 】4食分
・鶏ガラ出汁 700ml
・ごぼう 20cmくらい
・干し椎茸 3g
・里芋 小5個(200gくらい)
・鶏もも肉 1枚
・なると 適量
・せり 適量
・餅
・塩
・醤油

【 作り方 】
(1) 鶏ガラを3~4時間煮て、出汁をとる。
(2) ごぼうはマッチ棒くらいの千切りにし、下ゆでする。水からごぼうを火にかけて、沸騰してきたらざるにあげておく。
(3) 干し椎茸は水で戻して薄切りにする。
(4) 里芋はいちょう切り、鶏肉は筋を取り小さめの角切りに、なるとは斜め切り、せりは根を落とし、1cm幅に切る。
(5) 鍋に鶏ガラ出汁を入れ、ごぼうを入れて煮る。温まってきたらしいたけ、里芋、鶏もも肉も入れて、煮る。
(6) 塩と醤油で味を整える。鶏がらスープの塩味や、汁の煮詰まり具合によって調味料の量を調節してください。すぐに食べない場合は味を濃いめに作っておいて、温め直す時に水を足して調節しても良いです。
(7) 餅を焼いて、(6)に入れる。なると、せりも一緒に入れて煮る。器に盛っていただく。

 
愛子さんが書いてくれた手書きのレポートです^^
可愛いイラスト付きで、こちらを見ると作りやすいですよ♪是非みなさんも作ってみてくださいね。

 

私も子供の頃、年末にはお餅作りをしていました。おばあちゃんがあつあつのお餅をちぎり分けて、温かいうちに家族みんなで丸めていきます。どう頑張ってもおばあちゃんのように手早く、綺麗なお餅が作れませんでした。もう何年もつくっていません。懐かしいなぁ。

  次回は『遠藤家の麻婆豆腐』をご紹介します 

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この記事を書いた人

もりえり。
もりえり。料理人
鎌倉市在住の料理人です。『もりえり。』と呼ばれています。
数店舗の日本料理店で調理を学びましたが幼少期より母親に教えてもらった愛のある料理が学びの基盤です。

苦手なことは、言葉で想いを伝えること。
得意なことは、料理で想いを伝えること。

趣味は料理以外にフットサル、釣り、スケボー、寝ることです。