遠藤家の麻婆豆腐
【料理人・守永江里の名もなき料理】


料理名がつけられておらず、ごく普通に家庭の食卓に並ぶ『名もなき料理』を研究しているのが、山口県出身の料理人・守永江里さん。今回は「遠藤家の麻婆豆腐」をご紹介。

非日常にはいつもの食材が手元にない。そんな時に、ありもののなかでどう料理するか。思考を柔らかくする料理記事です。

[名もなき料理とは]

 

「晩御飯食べてから帰る?あるものでよかったら何か作るよ」義実家から鎌倉の家に戻る日、義母が言いました。「どうする?」と聞いてきた夫に「食べたい!」と私は二つ返事で答えました。

「麻婆豆腐でいい?素使ってささっと作っちゃうけど」と義母。家庭的な麻婆豆腐を食べるのはいつぶりだろう、とわくわくしました。

娘と遊んでいると、台所で炒め物をする音といい匂いがしてきました。こうやってご飯ができるのを待つ時間というのは私の日常にはないので貴重です。少しそわそわしつつも、ありがたくその時間を堪能させてもらいました。あー楽しみ。

台所に様子を見に行った夫が「なにこれ!麻婆豆腐じゃないじゃん!えりちゃん、なんかレタスとか豚ばら肉とか使ってるよ!」と言います。

お椀に盛られて出てきたのはこちら。私が知っている麻婆豆腐の匂いではなく、優しい卵の甘い匂いが香るものでした。いろんな具材が入っていて、彩りも鮮やかです。義母は、卵を入れるタイミングをうっかり間違えちゃったからふわふわにならなかったと言いましたが、所々で固まった卵もつるんとしていて美味しかったです。

義弟たちがいわゆる豆腐が入っただけの普通の麻婆豆腐があまり好きではなく、みんなが美味しく食べられるようにと工夫を凝らして出来上がったのがこの麻婆豆腐だそうです。遠藤家ではこれが定番。家族の好みに合わせてどんどん変化していった麻婆豆腐。美味しく食べてもらいたいという愛情や思いやりの詰まった一品だと感じました。

食べ応えのある豚バラが入っているのでご飯にもばっちり合います。思い出すとまた食べたくなってきました!とってもかんたんに作れる温かい一品。味付けなんて考えられないほど疲れたよ~なんて日にも手軽に美味しく作ることができますよ。ぜひ作ってみてくださいね。

 

素材それぞれの味や食感が楽しくたくさん食べられる麻婆豆腐です♪
【 材料 】2~3食分
・絹ごし豆腐 300g
・長ネギ 1/2〜1/3本
・豚ばら肉スライス 100g
・レタス 適量
・卵 1個
・麻婆豆腐の素 中辛 3人前分
・塩 少々
・胡椒 適量

【 作り方 】
(1) 絹ごし豆腐を一口サイズのさいの目切り、長ネギは2cm幅くらいの斜め切り、豚ばらは3センチ幅くらいに切る。レタスは洗ってちぎる。卵は溶いておく。
(2) 麻婆豆腐のとろみ粉を指定の水の量で溶いておく。
(3) フライパンで長ネギと豚ばら肉を炒める。塩と胡椒を振る。
(4) 麻婆豆腐の素指定の分量の水と、素を入れる。豆腐を入れて温める。
(5) 豆腐が温まったら、レタスを入れ、しんなりしたら卵を入れる。卵は豆腐の間に入れ、箸で軽くかき混ぜる。
(6) 卵がふんわりと固まったら火を止め、水で溶いたとろみ粉を入れる。再び加熱し、とろみがついたら完成。
 

義母の作ってくれる料理が好きです。おやつにチョコバナナクレープを作ってくれた時も遠慮なくたくさん食べました。焼きたての温かい生地がもっちりしていてあの美味しさは忘れられません。私も、簡単な料理でも日々楽しい雰囲気の食卓を作り、娘に食べる楽しさや手作り料理特有の幸福感をたくさん知ってもらいたいと思います。

次回は『ゆうさんのとある冬の日の炒め煮』をご紹介します

もりえりロゴ

この記事を書いた人

もりえり。
もりえり。料理人
鎌倉市在住の料理人です。『もりえり。』と呼ばれています。
数店舗の日本料理店で調理を学びましたが幼少期より母親に教えてもらった愛のある料理が学びの基盤です。

苦手なことは、言葉で想いを伝えること。
得意なことは、料理で想いを伝えること。

趣味は料理以外にフットサル、釣り、スケボー、寝ることです。