遠藤家のそぼろごはん
【料理人・守永江里の名もなき料理】


料理名がつけられておらず、ごく普通に家庭の食卓に並ぶ『名もなき料理』を研究しているのが、山口県出身の料理人・守永江里さん。

とある飲み会でそぼろごはんを食べながら、思い出した母の味。「遠藤家のそぼろごはん」をご紹介。

[名もなき料理とは]

遠藤さん(20代)のおはなし。

「高校生の時、友達が家に遊びに来ていて夕方になると母がごはん出してくれるんだ。年頃の男子だからそれが恥ずかしくて『いいよ、あとでマック行くから。』っていつも断ってた。でもある日、そぼろごはんを出してくれて、友達たちが『お前んちのそぼろごはんうまいな。』ってがっついてた。」

とある飲み会で、お店のそぼろごはんを食べながら、遠藤さんはそう言っていました。

「あの味はお店では食べられないから自分で作るしかないと思って、母につくり方を聞いて作ってみたんだけど、自分で作るものより母が作るものの方が美味しいんだ。なんでだろう?」

そのそぼろは、鶏肉じゃなくて牛と豚の合挽き肉だというので、私が食べたことがないものでした。とても興味深かったので、遠藤家のそぼろごはんについて教えてもらいました。

そぼろごはんの日は、大皿に肉そぼろと炒り卵がそれぞれ盛られていて、好きなだけ自分でとって食べるんだそう。男兄弟の多い遠藤家では、白ごはんのおかわりが絶えなかったようです。

なぜ一般的に使われる鶏肉ではなくて牛と豚の合挽き肉なのか、お母様にその理由を伺いました。それはズバリ「合挽き肉の方が美味しいから。」そして、お母様はどこのスーパーの合挽き肉が一番美味しく作れるかということまでも調査されていたそうです。遠藤さんが「自分で作ってみたけど、母が作る方が美味しいんだ」と言っていたのは、言葉にしないこだわりがお母様のごはんにあったからでしょう。

飲食店では料理に対する、こだわりを伝えることが多いです。

評価してもらうためだったり、お店選びのきっかけにするためだったり、美味しさを伝えるためだったり、理由はたくさんあるでしょう。
私は言葉の情報が多すぎるお店に行くと、ただただ情報を食べている気がして落ち着いて食べられないような感覚になります。逆に、これまでそんなこだわりは知らなかったけど、美味しいから心に残ってる。と言われる料理を作る料理人を目指したいと思いました。

肉そぼろはたっぷり作れる分量で記載しています。
必要に応じて調整してお作りください。
合挽き肉の旨味と、卵の甘みのバランスがとてもよくご飯が進みますよ。
意外とたくさん作っておいても良いかもしれません。

材料

− 肉そぼろ − 5人前くらい

・合挽き肉 ‥ 400g
・生姜 * ‥ 5g

A 料理酒 ‥ 大さじ1
A 濃口醤油 ‥ 大さじ2

A 砂糖 ‥ 大さじ2

※ チューブの場合は2cmくらい

− 卵そぼろ − 1人前分

・卵 ‥ 1個
・砂糖 ‥ 小さじ1~大さじ1/2
・ 油 ‥ 少々

・温かいごはん


【 作り方 】

(1)生姜をすりおろす。


(2)ボウルに卵を割り砂糖を加え、泡立て器でしっかり混ぜる。

(3)ひき肉をボウルに入れ、生姜と調味料Aを加え、混ぜておく。

(4)フライパンに少量の油を熱し、卵を入れ、泡立て器でよく混ぜながら火を通す。
卵そぼろができたら、器に移しておく。
(遠藤家ではステンレス製の鍋で作るそうです。細かく作れます。)

(5)フライパンに(3)を入れ、強火にかける。ほぐしながら火を通す。

(6)温かいご飯に肉と卵のそぼろをかけて完成。

目の前にいる人のことを思って毎日料理をしていたら、何が普通、何が一般的だという概念がなくなるのかもしれません。これが普通だ。という考え方を捨てて、柔軟に料理をしていきたいと思いました。

次回は『 石原家の野菜炒め 』を紹介します

この記事を書いた人

もりえり。
もりえり。料理人
鎌倉市在住の料理人です。『もりえり。』と呼ばれています。
数店舗の日本料理店で調理を学びましたが幼少期より母親に教えてもらった愛のある料理が学びの基盤です。

苦手なことは、言葉で想いを伝えること。
得意なことは、料理で想いを伝えること。

趣味は料理以外にフットサル、釣り、スケボー、寝ることです。