料理名がつけられておらず、ごく普通に家庭の食卓に並ぶ『名もなき料理』を研究しているのが、山口県出身の料理人・守永江里さん。今回は「釣りのおじちゃんのソース煮」をご紹介。
非日常にはいつもの食材が手元にない。そんな時に、ありもののなかでどう料理するか。思考を柔らかくする料理記事です。
[名もなき料理とは]
とある休みの日に、堤防釣りに行きました。時々風が吹くのを少し心配しながら、車のトランクに腰掛け、仕掛けの準備をします。この瞬間はいつも、早く竿を下ろしたい!と気持ちが高ぶります。車が釣り場の近くまで停められる場所なので気軽に来ることができる、お気に入りのスポットです。
すぐそばから釣りをしても良いのだけれど、奥の堤防まで行く方が釣れそうなので少し歩くことにしました。同じ釣り場では、3人のおじさまが釣りをしていました。私たちが釣り始めて間もなく、一人のフィッシングベストを着たおじさまが「今日はあんまり釣れないよ」と言いながら釣果を教えてくれました。言われた通り、あまりアタリがありません。
お昼ご飯を食べて休憩しようと腰掛けた時、またおじさんが来て、「これ食べるかね」と料理を差し出してくれました。四角いタッパーに入ったその料理は、一口サイズになっている鶏肉と、くたっとした玉ねぎが入っていて、食欲のそそられる香りのする煮物でした。奥様の手料理だそうです。お言葉に甘えて食べさせてもらうと、旨味と酸味のバランスが良い味付けでもう一口食べたい、と思いました。白ごはんやパンが食べたくなるような、お酒が飲みたくなるような。
聞いてみるとこの味付けは、お好み焼きソース、ウスターソース、カレー粉なのだと言います。酸味は、ソースの中のフルーツの酸味だったんですね。なんて会話を交わしていると、釣りの話題よりも盛り上がりました。美味しいおすそ分けもいただいて、さて、午後は釣るぞ~!なんて意気込んだ、そんな夢を見ました。
夢でおじさんに食べさせてもらった煮物。言われた通り作ってみました。カレー粉は隠し味程度に少しだけ。味に奥行きを出します。なくても大丈夫です。
【 材料 】
・鶏もも肉 1枚
・玉ねぎ 1/2個
・お好みソース 大さじ2
・ウスターソース 大さじ1
・カレー粉 小さじ1/6
・水80ml
・油 大さじ1
【 作り方 】
(1) 鶏もも肉は一口大に切る。玉ねぎは7mm幅くらいに切る。細いけれどちょっと食感が残るくらいに。
(2) 鍋に油を熱し、鶏もも肉を皮目から焼く。焼き色がついたら裏返し、玉ねぎも入れ焼き付ける。
(3) ウスターソース、カレー粉を入れ具材に絡める。水、お好みソースも入れ、蓋をして弱火で加熱する。
(4) 鶏肉に火が通り、玉ねぎがくたっと煮えたら蓋をとり、火を強めて煮汁を飛ばす。
(5) 味を整えたら完成。
お好み焼きソース、中途半端に残ってる!というみなさん。年末の冷蔵庫整理を兼ねて、ぜひ作ってみてくださいね。2021年もお世話になりました。良いお年を。
次回は『ふみちゃんの中華スープ』をご紹介します
この記事を書いた人
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鎌倉市在住の料理人です。『もりえり。』と呼ばれています。
数店舗の日本料理店で調理を学びましたが幼少期より母親に教えてもらった愛のある料理が学びの基盤です。
苦手なことは、言葉で想いを伝えること。
得意なことは、料理で想いを伝えること。
趣味は料理以外にフットサル、釣り、スケボー、寝ることです。
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