半径1.8mのクリエイティブ vol.2
ベランダからの天体観測


家の中でキッチンやリビングは、ザ・日常な風景だが、ベランダは少し非日常な空間ではないだろうか。今はベランピングなんて呼ばれる、ベランダでキャンプをする人たちもいるらしい。わが家ではもっぱら一番星を見るプチ天体観測場として楽しんでいる。

家島(という瀬戸内海の離島)に住んでいたころ、都会に比べて辺りが暗く、空気が澄んでいて、肉眼でも星がよく見えた。夜、海沿いの道を散歩しながら、こどもたちと夜空を見上げて月や星の美しさに魅せられていた。

ある日、神戸の実家に帰省することになった。わたしはそのとき3人目を妊娠してつわりに苦しんでいたので、じぃじとばぁばが上の子たちが暇だろうということで、明石の天文科学館に連れていってくれた。そこで初めてプラネタリウムを見て、天体観測沼にどっぷりハマッてしまったようだ。特に、太陽系の惑星がお気に入りで「水・金・地・火・木・土・天・海」と(プラネタリウムの上映中に流れていた歌を)歌いだしたり、図鑑をボロボロになるまで読んだりしていた。長女は、冥王星は太陽系の惑星ではなくなったんだよね(2006年、国際天文学連盟の総会にて冥王星は太陽系の惑星から除外されたそうだ)と言い出したりして、へぇ!よく知ってるねー!と感心したこともあった。夏休みには、粘土で太陽系を作ったこともある。こどもたちは、こうしてどんどん宇宙の魔法にかかっていったようだ。

それでは、プラネタリウムじゃなくても、自宅のベランダから見つけられるステキな星たちを、いっしょに探していきましょう!

夏によく見える星は『ベガ』『アルタイル』『デネブ』が有名だ。この3つはあなたのほぼ真上にみることができる。

頭上高くにひときわ輝く『ベガ』は、「こと座」を形づくる星のひとつで、ギリシャ神話では天才的音楽家オルフェウスが抱えていた金のたて琴をイメージしている。「ベガ」より少し南東の方角に見える『アルタイル』は、「わし座」を形づくる星のひとつだ。ギリシャ神話では、トロイ国の美少年ガニメデスに魅せらた最高神ゼウスが化けて、さらいにいったのがこの大わしなのだそうだ。『デネブ』は「ベガ」より少し北東、「アルタイル」からはまっすぐ北の位置にある。「デネブ」は「はくちょう座」を形づくる星だ。ギリシャ神話では、スパルタ国の王妃レダに近づくため、最高神ゼウスが化けたのが白鳥だったらしい。(ちょっとゼウスに幻滅してくる)この『ベガ』『アルタイル』『デネブ』を「夏の大三角形」と言い、夏の夜空では肉眼でもかなり見つけやすい一等星として知られている。

そして、「夏の大三角形」から南へと光の雲のようなものが流れているのだが、これが「天の川」で、無数の星が重なっている場所だ。「ベガ」と「アルタイル」は、この「天の川」を挟むように向かいあうように位置していて、織姫星と彦星としても有名だ。ご存じの七夕伝説は、中国の神話だそうだ。独身のころの織女と牽牛はとても働き者で愛し合っていた。しかし、結婚をしたとたんに怠け者になってしまい、織女の父親、天帝の怒りをかってしまった。天帝は、ふたりを天の川の両岸に住むよう命じ、年に一度7月7日の夜にだけ、会うこと許したのだった……。そんな、ロマンチックなラブストーリーとして語り継がれている。

夏の大三角形以外に、夏の一等星として知られているのは『アンタレス』だ。これは「さそり座」を形づくる星のひとつで、南の空で赤く光って見える。冬の星座では「オリオン座」(リボンの形をした星座。冬の星座では、Wの形をした「カシオペア座」と並んで、とりわけ見つけやすい星座だ)がよく知られるが、このオリオンはギリシャ神話に登場する狩りの神の名だ。オリオンは腕っぷしの強さをほうぼうに自慢していたらしく、これに憤慨した最高神ゼウスの妻ヘラが、オリオンを殺すよう命令したのが一匹のさそりだ。このサソリがオリオンを刺し、その手柄として天にまつられ、星座となった。(ゼウスもだが、ヘラもどうかと思う)

ちなみに、長女は11月生まれのさそり座なので、この「アンタレス」を中心とした「さそり座」をよく探している。こんな風に、自分の生まれた月の星座を探してみるのも、楽しいものだ。

毎年、夏休みに見られる「ペルセウス座流星群」は、「ペルセウス座」を中心に流れる無数の流れ星。条件が合えば1時間に100個もの流れ星が見られるらしい。が、残念ながら、わが家はまだ誰も見たことない。

「ペルセウス座」は、本来、北の空高くに見える秋の星座だ。その中に不気味に光る星、悪魔の頭という意味を持つ「アルゴル」は有名だ。この星は変光星と言い、星の明るさが変化する。変光星には様々な理由があるが、「アルゴル」は複数の星が順繰りにお互いを隠しあうことで明るさが変化する、食変光星として知られている。「ペルセウス座」は、ギリシャ神話にて勇者ペルセウスが退治した蛇髪の魔女メデューサの首かかげた姿を形どっているそうだ。「アルゴル」は、メデューサの頭の部分にあたる。

さて、今度はわが家のこどもたちが大好きな惑星を探してみよう!

夏の時期に確認できるのは『木星』と『土星』だ。ふたつとも南の方角にあるが、「木星」は「アンタレス」のすぐ近くにある。それよりも南東へ目をやると「土星」が明るく輝いている。

もし望遠鏡があれば、ぜひのぞいてみてほしい。「木星」にはきれいな縞模様があり、周りには「イオ」「エウロパ」「ガニメデ」「カリスト」の4つの「ガリレオ衛星」が見える。イタリアの天文学者、ガリレオお手製の低倍率の望遠鏡でも確認できたことから、名づけられたそうだ。これがコペルニクスの地動説の裏付け(当時は天動説が信じられていた)になった。

土星を望遠鏡で見ると、きれいなリングが確認できる。また、「タイタン」のような大きな衛星を見つけることもできる。わたしは、「タイタン」と聞くと、あの有名なお笑い事務所が思い浮かぶのだが、こちらの事務所名はSF小説家カート・ヴォネガットの本のタイトルからつけられたらしい(wikipedia)。(大変余談なのだが、カート・ヴォネガットと言えば「スローターハウス5」だ。SFが大の苦手なわたしだが、わりと薄い文庫本なので果敢にも挑んだ。が、なんとも理解できずに、今は本棚の奥で眠っている…いる)

最後に、わたしたちの地球は、「天の川銀河」という2000億個の星が集まる銀河系の一部だ。宇宙にはこういった銀河系が無数にある。そして、あなたが見ている夜空もまた、宇宙の一部に過ぎないのだ。星を見つめながら、果てしない宇宙に思いを馳せると、“だから今日はくよくよしないで今日の風に吹かれましょう”(中島みゆき「時代」より)と歌いたくなってくる。こんな時代だから、夜空を見上げて、一番星を探してみよう。

この記事を書いた人

しまかもめ
しまかもめフリーライター
(株)大阪宣伝研究所にコピーライターとして勤務。その後、デザイナー、編集者、フリーペーパー営業、ネットショップ企画運営を経て、独立(コトバアトリエ)。神戸市在住の3児の母。