年2回の消防設備点検で、火災事故を未然に防ごう


日本国内にあるすべての建物は、火災報知器を設置し、定期的に点検する必要があることはご存じだろうか。今回は、甲南防災株式会社の代表、平井さんに消防設備に関するお話しを伺った。

火災報知器の働きが、家族の命を守る

火災報知器は、住宅内での火災を素早く感知し、警報音で火災の発生を知らせる重要な消防設備だ。警報音によって、室内にいる人々は初期消火や避難を迅速に行うことができる。
高齢化などによる住宅火災の増加に伴い、2006年に消防法が改正され、新築住宅では火災報知器の設置が必須となり、中古住宅でも2011年以降、設置が義務化している。また年に2回(半年に1回)の消防設備の点検が必須になった。
筆者の自宅にも定期的に点検業者の方がやってくる。その際、必ず在宅しないといけないので、多少難儀に感じていた。
「点検の実施率は50~70%ですね。その時に点検できなければ、次回に持ち越しになります。共働きが増えて、なかなか点検できないご家庭もあるのが現状ですね。今は外部から点検できるシステムも開発されていますので、そちらを導入されている住宅も増えてきました」と平井さん。
設備に不具合があれば、やはり入室しての確認が必要だというが、それでも初期点検時に在宅しないでよいというのは助かる。筆者の住む共同住宅にもぜひ取り入れてもらえたらありがたい。

住宅火災では、毎年約1,000人もの人が命を落としているという。うち65歳以上が7割、死因としては逃げ遅れがほぼ半数を占めている。特に深夜の火災により、就寝時に巻き込まれたケースが多数報告されている。
まずは火の元となるたばこ、ガスコンロ、ストーブなどの暖房器具の取り扱いに注意し、コンセントのほこりは定期的に清掃しておく必要がある。
その上で、もし火災が起こった時のために、火災報知器の点検は必ずやっておこう。消防庁によると、火災報知器が火災をしっかり検知し、作動した事例では、住宅の損傷面積や死亡リスクが約4割も減少したという。少々面倒に感じるかもしれないが、効果はかなり大きい。点検を怠れば、30万以下の罰金もしくは拘留というペナルティもある。家族の命を守るためにも、点検はぜひお願いしよう。

個人でもできる防火対策とは?

消防設備の点検や補修は、基本的に資格を有するプロの手が必要であるが、個人でもできる簡単な防火対策もある。
「例えば、買い物に行くなど、どこかへ出かけるときには、念のため訪れる施設の避難経路を確認することが大切です。少し意識するだけでも、いざという時の助けになるはずです」と平井さん。
確かに筆者でいえば、宿泊施設の避難経路はさっと確認するが、普段よく訪れるショッピングモールやレジャー施設などは、恥ずかしながら確認したことがない。
もし不特定多数が出入りする大型施設で災害に遭えば、大勢の人がパニックになり、逃げ惑うかもしれない。普段よく行く施設こそ、避難経路を頭に入れておきたい。

また住宅消火器に関してだが、有効期間はおおむね5~6年(業務用消火器は約10年)である。その後不要になった消火器を処分する場合は不燃ごみには出せないそうだ。
「消火器は電化製品と一緒で、リサイクルする必要があります。圧力容器になりますので、不燃ごみに出すと危ないんです。捨てるときは、弊社のような消火器処分の特定窓口にお問い合わせください」
消火器のリサイクル処分は、全国にある防火・防災事業者などの指定取引所に依頼するか、指定取引所に持ち込むか、ゆうパックでの回収も行っているそうだ。まずは消火器の有効期限を確認してみよう。

消防設備の保全を通して、地域防災を支えていく

今回取材させていただいた甲南防災は、神戸を拠点に建物の消防設備の点検・修理・設計・施工を行っている企業だ。顧客はマンションなどの共同住宅、学校や病院などの公共施設、ショッピングモールやゴルフ場といった商業施設まで多岐にわたる。
「あらゆる建物が点検対象になりますよね。お客様もどんな業者にどのように頼んでいいのかわからないようで、さまざまな問い合わせにお応えしてきました」と平井さん。

もともと平井さんは工業高校を卒業後、梅田の阪急百貨店に入社。電気・消防設備管理の部署での勤務を経て、独立系の消防設備管理会社に転職。その後、縁あって甲南防災へ。12年前に代表を任されることになった。従業員は30名ほど。こういった消防設備の保全をメインに事業展開している会社としては規模は大きい。保全に当たるスタッフは国家資格である「消防設備士」の資格を所有。もし入社時にライセンスがなくても、資格取得のため全面的にバックアップをしてくれるという。派手とは言い難いが、やりがいがある仕事だ。建物が存在する限り、必ず必要とされる専門職である。

約40年以上、地域の安全を支えてきた甲南防災。
「これからも、弊社の関わる建物で事故が起きないよう、消防設備の保全に努めていきたいですね。そういった堅実な管理を通して、地域のお客様を大切にしていきたいと思います」

日常も非日常時も、安全というのは平井さんのような堅実な人たちによって形づくられているんだと、改めて感じた。

甲南防災株式会社
1979年、神戸市東灘区の甲南エリアにて設立。スプリンクラー等の水系の配管工事からスタートし、現在では消防用設備の設計・施工・保守・管理まで幅広く行う。最近ではメディア・SNS等を通した企業活動も。

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この記事を書いた人

しまかもめ
しまかもめフリーライター
(株)大阪宣伝研究所にコピーライターとして勤務。その後、デザイナー、編集者、フリーペーパー営業、ネットショップ企画運営を経て、独立(コトバアトリエ)。神戸市在住の3児の母。