“アップサイクル”のヒントになる
段ボールクラフトで1点モノを作ろう


関西生まれの編集者。ヨガやボディワーク、旅の本などに携わり、旅とヨガは似ているなと思う今日この頃。旅や転居、災害など日常と非日常の狭間で、自分を取り巻く〈内〉と〈外〉の環境を心地よくするために役立つアイテムを紹介する。今回は、段ボールクラフトです。

段ボールクラフトは1点モノ

ここ数年、名刺をやり取りする機会はなくなりましたね。出番を待つ名刺入れと目が合ったので、アップサイクルについてお話をしたいと思います。

私の名刺入れは他の誰ともカブることはありません(断言!)

なぜならダンボールでできているから。購入時はもう少しシャンとしていました。

これは段ボールクラフト作家の島津冬樹さんの作品です。シャレた模様でしょ? この名刺入れの素材は段ボール。どこか遠い国から日本まで有機バナナを運んできた段ボールからできていました。段ボールのどこを切り取るかでデザインは無限です。

島津さんは『段ボールはたからもの 偶然のアップサイクル』の著者。大学時代に家にあった段ボールで間に合わせの財布を作ったことがきっかけで「段ボール財布」を作り始めたそうです。

「財布が壊れてしまったけれど買い替えるお金がなく、そばにあった段ボールで作った財布を使っていたら、思いの外、周りからの評判が良かった」と、以前ご本人にお話を聞きました。それから「段ボール」自体に興味が湧いて、段ボール探しに世界中を旅したそうです。

目の付け所が面白い!

著書では段ボール財布の作り方も紹介されています。お子さんも参加できるワークショップも開催されているので、夏休みの工作にトライしてみるのもいいかもしれません。

やわらかい頭でアップサイクル

「段ボールを財布にする」ように、「元の製品よりも次元・価値の高い製品に作り変えること」をアップサイクルと言います。

●リサイクル:回収された資源を再びその同等の素材に生まれ変わらせること
●ダウンサイクル:再生紙など、元の素材よりも質を落とした製品となるもの
●アップサイクル:元の製品よりも次元・価値の高い製品に作り変えること

アップサイクルといえば、トラックの幌とシートベルトを使ってメッセンジャーバックを作っているブランドが有名です。かつての幌としての役目を終えた素材を使っているかどうかなんて関係なく、ただメッセンジャーバックとしてクール! というように、新たな付加価値を生むことがアップサイクルです。「おからパウダー」なんて、まさに食のアップサイクルの成功例ですよね。

モノが豊富にある時代だというのはわかっています。

特に日本は、便利になるための進化は世界随一。企業努力には頭が下がります。例えば、キッチングッズ売り場には、○○専用のピーラーがずらりと並んでいます。マイナーな野菜のためだけに開発する工夫は素晴らしい。けれど、用途が決まっているモノが身の回りに増えれば増えるほど、不安を感じずにはいられません。

「もったいない」と「あったらいいのに」をつなぐために企業が努力するように、私自身の頭と手を使ってモノを作ることも忘れてはいけないなと、「段ボールクラフト」を見るたびに身が引き締まります。災害時など非日常で発揮できる「知恵」を備えようと思うわけです。

幼い頃、果物の缶詰で竹馬のようなおもちゃを作ってもらったことがあります。缶の底に開けた穴に通した紐を持ち、缶に乗って歩き回っていました。私の住んでいた地域では「ぽっくり」と読んでいましたね。牛乳パックをいっぱい集めて小屋を作ったこともありました。今思えば、楽しいアップサイクルでした。

かつてベトナムを旅した時に、路上に座布団が並ぶ光景を目にしました。

夜の街に現れる、即席のカフェです。この座布団に見覚えある方、いませんか?

カブ天国、ベトナムならではのアップサイクル。カブのシートのまんまです。アレンジなし! 頭のやわらかさに脱帽です。こんな大らかさも見習おう。

Carton(島津冬樹)

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この記事を書いた人

tutu.
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編集者。
(株)角川クロスメディアに勤務。その後、都内の編集プロダクションにてヨガやボディーワーク、旅の本などに携わる。関西生まれ、シンガポール在住の猫飼い。