さわのピーマンフライ
【料理人・守永江里の名もなき料理】


料理名がつけられておらず、ごく普通に家庭の食卓に並ぶ『名もなき料理』を研究しているのが、山口県出身の料理人・守永江里さん。今回は、「さわのピーマンフライ」をご紹介。

非日常にはいつもの食材が手元にない。そんな時に、ありもののなかでどう料理するか。思考を柔らかくする料理記事です。

[名もなき料理とは]

さわという幼馴染の友達がいます。いつものようにおしゃべりをしていたら「今日ピーマンフライ食べよっかな。」と言いました。ピーマンフライってなんだ!? 我が家では食べたことないし、外食しても出合わない。そんな家庭料理はどうしても知りたくなるので、ピーマンフライについて聞いてみました。

「初めて作ったのは2年前くらい。友達の家で串揚げパーティーをしたんよ。その時、友達お母さんが色々な具材を串に刺して用意してくれた。その中に長芋があって、初めて長芋の串揚げを食べたんやけど、これがすごく美味しかったから家で作ろうと思ったんよ。家で作る時、たまたまあったピーマンも揚げてみた。そしたら美味しかったから、それからピーマンフライをよく作るようになった」

家で作る時、何かが生まれるのはいつも、たまたまあったから入れてみた、みたいな発見。失敗してもまぁ自分のためだしいいかぁ。なんて思いながらどんどん挑戦できるのが一人暮らしの料理の醍醐味。どうしてその時、ピーマン入れてみよう。って思ったのか聞いてみました。

「そもそもピーマンが好きやからかな。あと、ウスターソースが好き。ソースいっぱいかけたい。ピーマンとソースが合うんよ」

好きなものを好きなように食べる。好きなだけ作る。二人暮らし以上になるとそれだけでは料理ができません。自分はこれでいいけど、相手のために少しこうしよう。そういう意識が常に働きます。具材の選択だったり、調理法だったり、味の濃さだったり、人に作る時はやはり自分の好きなように、というよりも相手のためにという意識で料理をします。

それはそれで楽しくて、他人を思う気持ちから優しくて美味しいものが生まれるけれど、一人は一人の楽しみ方がある。さわのピーマンフライはまさにそんな感じがしました。さわが台所に立つときは、好きな曲を聴いてマイペースに作るそうです。

いつもは家族のために作っているけど、今日は自分一人のためにしか作らないでいいごはんの時、そんな時はとっても素朴なごはん。残り物を寄せ集めたおかずで料理という料理もしないしないかも。そんな日ってありますよね。そんな時に、肩の力を抜いて、好きな音楽を聴きながら、ピーマンフライをプラス一品。それだけで豊かな気持ちになる気がします。

心に余裕を持って料理をしていると、優しい気持ちになれたり、気づかなかったことに気付いたりします。そういう時間をあえて作ることはとっても大事だと思います。きっと、一人暮らしの人たちには誰にも共有することはないけど、独自の名もなき料理がたくさんあるんだろうなぁと思いました。もっともっと知りたいです。
人が料理を楽しむというとても原点的な部分が見えるような気がするからです。

今日は好きな音楽かけながら、リラックスしてピーマンフライ作ろう。

ピーマンに下味をつけたり、ソースをアレンジしたりはしません。さわは「原点にして頂点やろ!」と言っていました(笑)

シンプルですが、揚げたての食感、ピーマンとソースの香りがとてもよく、美味しくてたくさん食べられますよ。食べ終わってから、もっと作ればよかったっていつも思っちゃいます。

スナック感覚で食べられるので、おやつやおつまみにも◎
【材料】
・ピーマン
・小麦粉
・水
・パン粉
・揚げ油

【 作り方 】
(1) 小麦粉と水を同量ずつよく混ぜておく。
(2) ピーマンを縦半分に切って、たねをとる。洗って、キッチンペーパーで水気をしっかり拭く。
(3) 袋に入れて、小麦粉をまんべんなくまぶす。
(4) 余分な小麦粉をはたいて、①にくぐらせ、パン粉をつける。
(5) 高温の油でカリッと揚げる。
(6) お皿に盛って、ソースをかけていただく。

話を聞いて私もやりたくなったので、ピーマンも具材に加え、いろんな串カツを作りました。たまたまあった、食パンも揚げてみました。食パンにパン粉をつけて揚げて、ソースをかけて食べると、お肉がないのにカツサンドを食べている気分になりました。(笑)

“ たまたまあったから入れてみた ” この発見って楽しいですね。

次回は『ピック先生のセロリスープ』をご紹介します

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この記事を書いた人

もりえり。
もりえり。料理人
鎌倉市在住の料理人です。『もりえり。』と呼ばれています。
数店舗の日本料理店で調理を学びましたが幼少期より母親に教えてもらった愛のある料理が学びの基盤です。

苦手なことは、言葉で想いを伝えること。
得意なことは、料理で想いを伝えること。

趣味は料理以外にフットサル、釣り、スケボー、寝ることです。