料理名がつけられておらず、ごく普通に家庭の食卓に並ぶ『名もなき料理』を研究しているのが、山口県出身の料理人・守永江里さん。今回は「伊織さんのしらすと茗荷の和えたん」をご紹介。
非日常にはいつもの食材が手元にない。そんな時に、ありもののなかでどう料理するか。思考を柔らかくする料理記事です。
[名もなき料理とは]
同郷のお姉さん、伊織さんに夏にオススメのお料理を教えていただきました。それは、しらすに茗荷を乗せて、白胡麻油をかける。という一品。実はこれを聞いたときは、お醤油もかけず、味が淡白過ぎないのかな?と思いました。
ですが、伊織さんがとてもお料理上手な方なので、これは新しい味が知れるぞと期待してやってみるとやっぱり想像以上の絶品!ここまでシンプルで美味しい料理があったんだと驚きました!1人でしらす1パックは軽く食べました。(笑)
ごま油が優しくしらすの臭みを消してくれて、茗荷の食感が爽やかで、塩分はしらす本来のものだけで十分でした!お醤油味にしちゃったらもったいない。こんなにシンプルで美味しい食べ物はなかなか思いつかないです。考えようとするととても難しい。塩加減でさえ素材そのものの味。香りも薬味の風味だけ。ごま油はかけますが、白ごま油なので香りはほとんどありません。
このお料理がどうやって生まれたのか教えてもらいました。
「みんなで集まって家飲みした時に、友達がしらす、パクチーにナンプラー、胡麻油をかけて作ってたんです。家で再現しようとしたけど、初回パクチーなくて、たまたま茗荷があったので、入れてみたら、すごく美味しくて。後から、パクチー加えたり、葱を加えたり、色々とアレンジしたけど、やっぱ、シンプルに茗荷が美味しいですね。今では、我が家の夏の定番です」
そして、「茗荷は小口切り。食材の切り方は、全体の調和に意外と大切と感じています。」と伊織さんは言います。確かに食べてみると、この茗荷が丁度いい食感でしらすともよく合うのです。千切りやみじん切りでは、しらすと調和しないかもしれません。
お互いを引き立て合っていて、茗荷ってこんなに美味しかったっけって思いました。とてもシンプルに見えて、味の足し算引き算だけではなく、切り方の調和まできちんと考えられた一品でした。素材そのものの塩味と香りを生かしたお料理。実は見つけていないだけで、たくさんあるんだろうと思います。いろんな食材に、新たな発見が隠されていると思うと毎日の料理の時間がよりわくわくしてきます。
アレンジなしのシンプルな食べ方をご紹介します。白ごまを振りかけたり、レモンを絞ったり、青じその千切りやパクチーを乗せても美味しいそうです。最後に和える油は、白ごま油やえごま油など香りの少ないものがオススメです。
【材料】
・しらす
・茗荷
・白胡麻油
【 作り方 】
⑴ 茗荷は洗って、小口切りにする。
⑵ 器にしらす、①をのせ、白胡麻油をひと回ししたら完成。
台所仕事には、たくさんの発見が隠されています。いつも新しい気持ちで料理をしていくと楽しいです。新しい味を見つけるには、足し算を考えがちですが、いつもなんとなく作っているものに、引き算をしてみるともっと美味しくなることがありそうです。積極的に引き算調理にチャレンジしていこうと思います。
次回は『中村家のおばあちゃんのシチュー』をご紹介します。
この記事を書いた人
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鎌倉市在住の料理人です。『もりえり。』と呼ばれています。
数店舗の日本料理店で調理を学びましたが幼少期より母親に教えてもらった愛のある料理が学びの基盤です。
苦手なことは、言葉で想いを伝えること。
得意なことは、料理で想いを伝えること。
趣味は料理以外にフットサル、釣り、スケボー、寝ることです。
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