えりかちゃんのおばあちゃんのシチュー
【料理人・守永江里の名もなき料理】


料理名がつけられておらず、ごく普通に家庭の食卓に並ぶ『名もなき料理』を研究しているのが、山口県出身の料理人・守永江里さん。今回は「えりかちゃんのおばあちゃんのシチュー」をご紹介。

非日常にはいつもの食材が手元にない。そんな時に、ありもののなかでどう料理するか。思考を柔らかくする料理記事です。

[名もなき料理とは]

 

お友達のえりかちゃんのお話です。

ご実家で暮らしていた頃、ご両親は共働きでお料理担当はおばあちゃんでした。おばあちゃんのお料理はどれも美味しかったと言うえりかちゃん。数ある思い出の手料理の中で、この日はシチューについてお話を伺いました。

「おばあちゃんの作るシチューにはロールキャベツが入っていて、それに合わせた大きな野菜がゴロゴロと一緒に煮込まれています。そして、お肉にはこれでもかと胡椒が効いています。祖母の味付けは基本的に胡椒が効いていて、コロッケもソースの必要がないくらい塩胡椒が効いていました。外食でコロッケにソースをかける食べ方を見たとき、凄く不思議に感じたのが幼少期の思い出です。(笑)」

手料理には、作り手の特徴が出ます。甘めの味付けをする人、薄味の人、にんにくを効かせた料理が得意な人、などなど人によって特徴はそれぞれです。無意識的かもしれませんが、味は食べてくれる人への何かしらのメッセージによって構成されていると思います。もう少し塩分を効かせた方が喜んでくれるかな。けれどしょっぱいのも体に悪いから、胡椒を増やして辛味と香りを強めにしてはっきりした味付けにしておこう。そんなことを考えつつ、私も胡椒たっぷりの料理になりがちです。

えりかちゃんのおばあちゃんの料理にはどんな思いがあって、胡椒を効かせているのでしょう。日常で当たり前に食べている家庭料理に特徴を見つけて、作り手の思いを想像をするのもいいですね。一品一品に、いろんな気遣いが含まれていたことに気づくことになります。

料理を作る時には、必ず頭の片隅に食べてくれる家族の顔が浮かびます。えりかちゃんのおばあちゃんは、ご家族に向けたたくさんの愛情を料理に込め続けてこられたことでしょう。

野菜の優しい出汁が染み出したマイルドなホワイトシチューに、たっぷりの肉汁を含んだロールキャベツを絡めて食べるご馳走。お肉に胡椒が効かせて、シチューとのコントラストを楽しみながらぜひ皆さまも作ってみてください。

ロールキャベツの巻き終わりには煮崩れないようにつまようじをさします。田舎の大きなキャベツで作るときには、葉がとても大きいので巻き終わりを下にして、つまようじを使わないこともあったそうです。

【 材料 】
- ロールキャベツ -
・牛豚合挽き肉 または 豚ひき肉 350g
・キャベツ
・玉ねぎ 1/2個
・塩 小さじ1
・胡椒 適量
・パン粉 1/2カップ ・・・パン粉と牛乳は合わせてふやかしておく。
・牛乳 50ml
・卵 2個

・じゃがいも 2個
・にんじん 2本
・玉ねぎ 1個
・ホワイトシチューのルー 1箱(160gくらい)
・水 1L
・牛乳 200ml
・油 適量

【 作り方 】
(1) ロールキャベツを作る。パン粉は牛乳と合わせてふやかしておく。
(2) 玉ねぎはみじん切りにして、油を熱したフライパンで炒める。透明になったら取り出して粗熱をとっておく。
(3) キャベツは外側から葉を剥がしていく。10~15枚くらい。大きな鍋に湯を沸かし、キャベツを茹でていく。色が鮮やかになり、柔らかくなったら取り出して冷水につける。芯の部分は分厚くて巻きにくいので、削ぐ。水気を切っておく。
(4) ボウルに肉、塩、胡椒(たっぷりがオススメ)、①のパン粉、②の玉ねぎ、卵を入れてよくこねる。10等分に分け、空気を抜きながら丸めておく。
(5) ④を③で巻いていく。小さな葉は重ねて使う。破れているところには小さな葉を重ねて、巻いたときに肉が出ないようにしっかりと巻く。巻き終わりにつまようじをさして崩れないようにする。
(6) シチューを作る。じゃがいも、にんじんは大きめの乱切りにする。玉ねぎはくし形切りにする。
(7) 大きめの鍋に油を敷いて、⑥を入れて炒める。油が回ったら水を入れて5分煮込む。
(8) ⑦にロールキャベツを並べ入れる。蓋をして約20分弱火で煮込む。アクが出たらその都度とる。
(9) 火を止めてルーを溶かす。牛乳を入れて再び弱火で、5分くらいとろみが出るまで煮込んだら完成。ロールキャベツのつまようじをとり、器に盛っていただく。

えりかちゃんは、一人暮らしをした時にこのシチューが食べたくなって、おばあちゃんが作っていたのを思い出し、見よう見まねで作ってみたそうです。今は彼氏さんにも食べてもらうことがあるとか。また自然と名もなき料理のリレーが続いていました。

次回は『福永家のミートパイ』をご紹介します

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この記事を書いた人

もりえり。
もりえり。料理人
鎌倉市在住の料理人です。『もりえり。』と呼ばれています。
数店舗の日本料理店で調理を学びましたが幼少期より母親に教えてもらった愛のある料理が学びの基盤です。

苦手なことは、言葉で想いを伝えること。
得意なことは、料理で想いを伝えること。

趣味は料理以外にフットサル、釣り、スケボー、寝ることです。