森の国・エストニアならではの災害? 氷点下で流血騒ぎも
【海外で暮らす子育て世代の防災】


地震の多い国、竜巻の多い国……。国や地域によって、起こりやすい災害も変わってきます。日本は「災害大国」とも言われ、地震以外にも台風や水害など、多くの自然災害が起こりやすいため、防災への意識も当たり前のように持ち合わせています。ですが、他の国はどうなのでしょうか? 国が違えば災害も違い、災害が違えば備えも違ってきます。そこでこのシリーズでは、海外で暮らす日本人、なかでもより手厚い備えが必要な“子育て世代”のみなさんに、現地で起こりやすい災害と、防災への意識についてお聞きしました。

第1回目は、「バルト三国」と呼ばれるエストニアの首都・タリンで、エストニア人の旦那様と4歳の息子さんと暮らす、カルーシオンさんにお話をうかがいます。

エストニアで多い災害は突風

――まず初めに、エストニアはどのような災害が起こりやすいのでしょうか?

カルーシオンさん:エストニアは日本と比べて、自然災害がとても少ない国です。プレートの境目が近くにないので、地震も起きないですし、大きな山がないので噴火もありません。雪の多い国ですが、雪崩のニュースもほとんど聞かないですね。

バルト海に面していますが、バルト海は内陸の海なので、津波の心配もないですし。海沿いのパルヌという街では、風向きによっては水位が上昇して、まれに水害が起きるようですが、日本の津波ほどシリアスなものではないようです。

エストニアで多い災害は突風ですね。強風による被害が一年に何度もあり、倒木が道をふさいだり、建物や車の上に倒れてきて、ガラスを割るような事故がたびたび起こります。ちょうど先日も強風の日があって、うちのすぐ近くの木が倒れ、停めてあった車が大破していました。


自宅のすぐそばでも倒木が頻繁に起こります

森林が多い国なので、森にまつわる事故も起こりやすいですね。鹿や猪などの野生動物と車の衝突事故も、頻発に起きているようです。まれにヘラジカとぶつかってしまうこともあるようで、ある意味エストニアらしいかな。ヘラジカはとても大きいので、ぶつかるとかなりの衝撃らしくて。運転中にヘラジカと衝突してしまった友人は、怪我は軽かったものの、相当な精神的ショックを受けてしまったようで。事故以来、あまり連絡が取れなくなってしまったほどなんですよ。


「ヘラジカ飛び出し注意」の看板

それに毒キノコの事故も、たまに起きているみたいですね。エストニアではキノコ狩りは一般的なので、家族や知人の中に、キノコに詳しい人がたいてい一人はいるんですよ。なのでみんな、そういう人と一緒に採りに行くようにしています。ですが、それでもまれに間違えてしまうことがあるようですね。

冬季は氷柱、転倒に注意

――ヘラジカとの衝突事故は、たしかに日本では起こらないですね。他にも“エストニアならではの災害”はあるのでしょうか?

カルーシオンさん:エストニアは、冬の間は一日中氷点下の日が何か月も続く北国です。そのため巨大な氷柱(つらら)ができるのですが、気がつかずにその下を通ってしまい、落ちてくる氷柱で怪我をする事故がありますね。冬季は“頭上注意”のテープがあちこちに貼ってありますよ。

エストニアの暗い冬。頭上の氷柱に気がつかないことも

氷が溶けると、一歩も進めないほど、地面がツルツルに凍ってしまって。ニュースで「なるべく外出を控えるように」とアナウンスされるほどなんです。

そんな朝に子どもを幼稚園に送っていったら、他の園児のお父さんも、滑って怪我をしたらしく、松葉杖をついていて。「エストニア人でも転んでしまうほどなのだから、私も気をつけないと」と思っていたのに、その日の夜に、案の定私も転んでしまって。顔を強打して流血し、大騒ぎになりました……。

そのような日は車での事故もとても多くて、大型トラックが滑って道路を飛び出しているのも目にしましたし、本当に危険ですね。凍った地面を子どもに歩かせるのは危ないので、ソリで登園する園児も多いですよ。冬の間は、自転車置き場にソリがずらりと並んでいます。

――ソリで登園なんて、寒さが厳しいエストニアらしい風景ですね。日本でも、北海道ではソリ登園がおこなわれているそうです!

次回も引き続きカルーシオンさんにお話を聞いていきましょう。

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この記事を書いた人

あんじミサ
あんじミサ
ライター・イラストレーター。365日パンとスイーツを食べない日はない小麦粉系女子。コンビニとコストコ新商品のチェックが趣味。グルメ、旅行、育児を中心に執筆中。