「音楽の力で、防災をカルチャーに昇華させたい」
神戸発・防災音楽ユニット「Bloom Works」石田さん


音楽を通して防災を楽しく伝える、ユニークなミュージシャンがいる。今年2月、ワーナーミュージック・ジャパンより「Bloomin’〜笑顔の花咲いた〜」でメジャーデビューした「bloom works」だ。メンバーは、アコースティックの世界でシンガーソングライターとして活動してきた石田裕之さんと、日本のボイスパーカッションのパイオニアとして活動してきたKAZZさん。今回は、石田さんにこれまでの音楽活動や、防災と音楽の関係性についてお話を伺いました。
10代でロックにハマって以来、音楽に夢中になったという石田さん。倉庫に眠っていたお父さんのクラシックギターをさわりはじめ、高校に上がるとクラシックギター部(軽音部がなかったそうだ)に入部。部員が一人で驚いたというが「それなら好きなことをしよう」とエレキギターを持ち込んだ。一人でもバンドのようにしたいと、ちょうどDTMが出始めたころで、パソコンで曲をつくって、CDに落とし込んだ。友人に聞かせると「すげー!」と珍しがってくれた。部員が増えると、バンドを組み、文化祭などのイベントでライブを行った。神戸大学に進学してからも、今までのバンドメンバーと音楽活動は続けた。就職活動の時期になって、周りが音楽から遠ざかる中、ミュージシャンとして食べていきたいと両親に伝えると猛反対されたという。
「両親には、音楽1本で自活することを条件に、誓約書に判を押すかたちで認めてもらいました(笑)。もう後がなかったですね」

大学を卒業してからは、ショッピングモールなどで飛び込み営業をしたりと必死でやってきた。そのうち、徐々に活動が知られるようになって、「うちでも歌ってほしい」と声がかかるようになった。


西脇市(兵庫県)では、障害者ための支援施設が新しく開所することになり、そちらに呼ばれて、公演をすることになった。聴ききに来てくれた利用者さんの一人が「いいコンサートだった。今日は人生でいちばんいい日や」と言ってくれたという。
「一番いい日、なんて。音楽にはそんな言葉や感情をもたらす力があるんだ、と改めて思いましたね。音楽を届ける側としての責任も感じました」

また、全国各地の被災地でもボランティア活動を行いながら、慰問公演を行った。中学生のとき、阪神・淡路大震災を経験したことが、根底にあるからだ。

石巻市(宮城県)では、東日本大震災のボランティア活動をしていたところ、地元の方が声をかけてくれて、隣町の女川の体育館で公演をすることになったという。しかしまだ震災の傷跡深いこの土地で、自分の音楽を喜んでくれる人がいるのだろうか、と不安になった。
「ギターを片手に会場には来たけれど、正直なところ、何を歌えばいいのかわからなかった。押し付けになるんじゃないか、という思いが頭をよぎりました」
そこで、石田さんは歌集を取り出して、お客さんに好きな曲をリクエストしてほしいとお願いすることに。リクエストしてくれた人は前に出てきてもらって一緒に歌う。最初はお互い緊張していたが、だんだん打ち解けてきて、最後は「上を向いて歩こう」で大合唱になったことは忘れられない光景だ。

熊本まで、支援物資を詰め込んで車を走らせたこともあった。熊本地震直後、先に集まっていた仲間たちと合流して、一緒にボランティア活動を行った。地元の施設の方が「せっかくだから歌でもうたってもらおうか」と言って、避難所の人々に声をかけてくれて、即席コンサートをすることになった。
「こんなところで歌が聴けるなんて、と喜んでくださいました。こんな支援があるんだ、いいね、って。嬉しかったですね」

シンガーソングライターとして活動しながら、支援活動にも力を注ぐようになった石田さん。防災士の資格を取得したり、各地の防災イベントに出演して、啓発活動に取り組んでいた。

そんな中、兵庫県立大学の浦川先生を介して、KAZZさんに会うことになったという。イタリアンレストランで食事をして、意気投合。翌日にはKAZZさんから「ぜひ一緒にやろう!」と誘われたそうだ。
「最初は驚きました。でも、一人でやるより、二人の方がもっと多くの人にメッセージが伝わるんじゃないかと思いました」

震災のことを伝えようと尽力している人はたくさんいる。しかし、それ以外の人たち、特に震災を経験していない若い世代には、なかなか浸透しにくいという。伝える側は徐々に疲弊し、震災の記憶は風化して、忘れた頃にまた同じことが起こってしまう。それをなんとか防ぎたかった。

こうして2017年、異色の音楽防災ユニット「Bloom Works」を結成。2019年から毎年、神戸震災復興記念公園(みなとのもり公園)にて、防災減災音楽フェス「BGMスクエア」を開催するなど、精力的に音楽活動を行っている。


2019年には念願だったインドネシアのシムル島へ行った。2004年、2005年と22万人の犠牲者が出たスマトラ沖地震。その震源地近くに位置するシムル島だが、100年前の津波の教訓を歌にした「スモン」によって、島民のほとんどが高台に逃げて助かったという。

二人は島の伝承者による古来の「スモン」や、インドネシア公用語で子守唄のようにアレンジされた「スモン」を聴き、一緒にセッションを重ねた。自分たちも「スモン」のような歌をつくりたいと思った。
「スモンのように、文化として防災を伝えていくことが、僕たちのやりたいことなんです」


震災から20年経つ神戸は風化のトップランカーでもある。
「風化を防ぐことも大切ですが、これからは、命を守るというエッセンスの部分を抽出して、楽しんで伝えていくフェーズに入っていくのではないでしょうか。防災をエンタメ化することで伝わる層が増えるんではないか、と思っています」

Bloom Worksのように、ただ楽しみながら、防災意識につながるというのは、もっとも効果的な災害対策になりそうだ。

Bloom Works 石田裕之
1981年、神戸市北区出身。2003年、神戸大学を卒業後、シンガーソングライターとして活動しながら、被災地での支援活動も行う。2017年、ボイスパーカッションのパイオニアKAZZに誘われ、防災音楽ユニット「Bloom Works」を結成。2021年、ワーナーミュージック・ジャパンより「Bloomin’〜笑顔の花咲いた〜」でメジャーデビュー。

防災士(日本防災士会所属)、ひょうご防災リーダーなど多数の資格を取得。神戸学院大学「地域学」講師、篠山市観光大使。現在、サンテレビ「お菓子な時間」、ラジオ関西「時間です!林編集長」、ラジオ石巻「石田裕之の神戸to石巻」に出演中。趣味はキャンプごっこ。火打ち石と落ち葉で火起こしすることが目標。
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この記事を書いた人

しまかもめ
しまかもめフリーライター
(株)大阪宣伝研究所にコピーライターとして勤務。その後、デザイナー、編集者、フリーペーパー営業、ネットショップ企画運営を経て、独立。神戸市在住の3児の母。防災に携わる人々の取材をしています。