災害時にすぐ、外に逃げ出すこともできる
ハイブリッドな草履「ケンコー ミサトっ子」


関西生まれの編集者。ヨガやボディワーク、旅の本などに携わり、旅とヨガは似ているなと思う今日この頃。旅や転居、災害など日常と非日常の狭間で、自分を取り巻く〈内〉と〈外〉の環境を心地よくするために役立つアイテムを紹介する。今回は、履き心地の良い草履「ケンコー ミサトっ子」です。

「ミサト」は草履の名産地である奈良県三郷町から?

阪神・淡路大震災が起きた時、私は中学生でした。幸いにも、自宅の大きな被害こそ免れましたが、その衝撃を体は覚えていました。そのことに気づいたのは、東日本大震災の日です。
その日は都内にあるビルの一室で仕事をしていました。徐々に揺れが大きくなる中、頭をよぎったのは建物の倒壊。“あの揺れ”がくるかもしれないという漠然とした不安から、突発的に靴を履き始めていました。今ほど防災に関心も知識も乏しかったので、ほとんど直感的に。これから起こる何かに対して準備をしないと、と思ったのかもしれません。「いつでも外に出られるように、何か履かないと」。

今日紹介するのは、外でも使える室内履き。素足で生活する心地よさと、室内履きで生活する快適さを備えた理想の形を探し……試してきた末に、この草履に出合いました。

「ケンコー ミサトっ子」と言います。「ミサト」は、草履の名産地である奈良県三郷(サンゴウ)町からきているのでしょう。地元の職人さんたちの手で、一足一足ていねいに作られた、天然のい草の草履です。

足の指の力が弱い、土踏まずの未形成、外反母趾、重心が踵寄りなどの足の悩みを解決するために、「ミサト履物協同組合」と兵庫教育大学名誉教授の原田碩三先生が共同で開発したそうです。原田先生は「草履」の効用を長年研究されていて、「『土踏まず』が未形成な子どもにこそ草履が必要」と説かれています。足の指で鼻緒を自然に挟んで歩く草履は、姿勢を整えるためにとてもよいのだそうです。その機能は、大人にだって必要です。

「ミサトっ子」はデザインも秀逸。美しい畳表に目を奪われます。

畳敷きの部屋にスリッパで入らないように、日本家屋に住む日本人のライフスタイルには、室内履きは必要なかったんじゃないかなと思います。畳床は程よい軟らかさがあって、素足で歩くたびにサラッとした感覚が伝わって気持ちがいいですよね。この草履はまさに、“足裏サイズの畳床”という感じ。フローリングが増えた現代の住環境にピッタリ。畳に魅力を感じている外国人旅行者へのお土産にもいいと思います。

タグを見てください。「ミサト履物協同組合」の職人さんの名前があります。担当した方のハンコだそうです。自信の表れですね。かっこいい。

子供たちはこれでドッヂボールも

江戸時代から、わら草履製造を家業としてきた職人の町の、現在の職人さんらが手作りしているだけあって、細部の美しさはお墨付き。私の経験上、い草が柔らか~くなるほど長く履いていても、ほつれてきたことはこれまでありません。
裏面はゴム製。フローリングは傷つけたくないですよね。大丈夫です。

アスファルトなど硬い地面の上を歩いても疲れにくいように考えられているので、外履きとしての強度も十分。「ミサトっ子」を指定靴として採用している保育園も多く、子どもたちはこの草履で、通園も、鬼ごっこやドッジボールもやっているようです。

〈日常〉がひっくり返った2020年。家で過ごす時間が少しずつ増えて、いつかの〈非日常〉が〈日常〉になりつつある2021年も、あとわずかになりました。今の自分にとって大事な「基準」が変わっているかもしれません。年の終わりに、「足元」に目を向けて新年を迎えてみるのもよくないですか?

ケンコー ミサトっ子

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この記事を書いた人

tutu.
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編集者。
(株)角川クロスメディアに勤務。その後、都内の編集プロダクションにてヨガやボディーワーク、旅の本などに携わる。関西生まれ、シンガポール在住の猫飼い。