京王線での事故から考える有事の際の行動
【現役客室乗務員の行動指針】


「おもてなし」「心配り」「マナー」を日々、学んでいるという現役客室乗務員のRさん。客室乗務員のお仕事には、「航空保安員」としての役割もあります。緊急時には乗客の無事を優先し、命を預かる立場となるのです。そういった訓練を経てきたRさんが、非日常的な状況の中で、どのように思考し、行動すべきかを教えてくれました。


昨年度、アメリカコミックの登場人物ジョーカーの仮装をし、京王線電車内で男が刃物で他の乗客を切りつけた上、液体を撒いて放火した事件がありました。

あまりにもショッキングな事件のため、今も記憶に残っている人も少なくないかと思います。ニュース映像では、国領駅に到着した電車から、乗客が半開きになった車両の窓から脱出する様子が報じられていました。幸いにも火災が発生した車両から乗客が逃げて離れていたため、脱出に時間を要しても煙を吸って負傷する人の人数が爆発的に増えなかったのではないでしょうか。

国領駅に到着した電車の乗降ドアが開かれることなく、なぜ乗客は上半分しか開かない狭い窓から脱出をしていたのでしょうか。事件発生直後、「非常通報装置」が複数回作動したものの、乗客からの応答がなく、車掌はすぐに状況が把握できませんでした。

また、国領駅到着前に非常時にドアを開けるコックが使用されたため、列車が通常の停車位置より手前で止まり、ホームドアと列車のドアの位置がずれたため、車掌は安全面などから乗降用のドアを開くことができず、結果として多くの乗客は窓から避難する事態となりました。

この事件では、非常用ドアコックが操作されたタイミングが問題となり窓からの脱出に至りましたが、もし乗客が火災での対処方法に関してや、非常用ドアコックの仕様について正しい知識を持っていればハレーションは防げるのではないでしょうか。同じ事件が起きないことを願いながらも「もしも」のケースに備えて知識のアップデートをしましょう。


・火災消化器の位置、火災の際の留意点

非常時には自身の身の安全を確保しつつ、火災消化の支援をできるようであればまず「初期消化」に努めましょう。
初期消化で重要なことは、熱・空気・可燃物を遮断することです。間違ってもコートなどで煽ってしまうと酸素を供給することになりますので、炎の上からコートなどをかぶせて空気を遮断しましょう。
車両の設備にもよりますが、車両の連結部付近に消化器が設置されていることが多いです。落ち着いて以下の手順で消化活動に当たりましょう。

 1. 安全ピンを抜く
2. ノズルを持ち、火元に向ける
3. レバーを強く握る

この際煙を吸わないよう、風上に立ち姿勢を低くしたままでいることがポイントです。

・非常用ドアコックの操作について
鉄道各社では非常用ドアコックを使用する前に非常通報装置を使用し、車掌や運転士に情報共有してほしいとしています。
操作方法自体は難しいものではなく、カバーを開けてレバーを引くだけというシンプルな構造になっており、操作方法がカバーやその付近に記載されていることを確認できます。
ただし鉄道各社や車両ごとに仕様が異なり、また基本的に非常時等に乗務員扱うこととなっているため、乗客への積極的な周知がなされていないことが現状としてあります。

首都圏を走る鉄道会社の多くは車両内に液晶モニターを設置し、運行案内や動画広告などを放映しているものを目にする人が多いと思いますが、今後は有事の際に必要な知識や行動してほしい内容を積極的に乗客に周知する必要があるのではないでしょうか。
また、自身の命を守る行動が最優先としつつも、大勢の命を守るためにも走行中の車内で火災が発生した際にの対処方法などの知識を持っておきたい。

この記事を書いた人

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R
接遇業とUXデザイナーの二足のわらじを履いてます。
ユーザーへの共感を大切にし、寄り添った課題解決を心がけており、デザイン思考を接遇業へ活かせないか、試行錯誤中。
おもてなしや心配り、マナーについても日々勉強しています。