有事の際のユニバーサル対応を考える
【現役客室乗務員の行動指針】


「おもてなし」「心配り」「マナー」を日々、学んでいるという現役客室乗務員のRさん。客室乗務員のお仕事には、「航空保安員」としての役割もあります。緊急時には乗客の無事を優先し、命を預かる立場となるのです。そういった訓練を経てきたRさんが、非日常的な状況の中で、どのように思考し、行動すべきかを教えてくれました。

昨年、57年ぶりに東京でオリンピック・パラリンピック大会が開催されました。東京オリンピック・パラリンピック開催を見据え、2017年2月に政府が「ユニバーサルデザイン2020行動計画」を発表し、公共の場を含む様々な場所でバリアフリー化・ユニバーサルデザイン化された施設が設計されてきました。

ユニバーサルとは本来、一部の人たち向けに偏った思考ではなく、多く・全ての人に共通するような考えのことを指しますが、ユニバーサルとバリアフリーを混同し、ユニバーサル=障害がある人、高齢者というイメージを持っている人もいるかと思いますが、言葉の壁がある外国人にとってもユニバーサルという考えは有効です。

コロナ禍で日本への入国制限が強化されている状況でも、出入国在留管理庁のデータによると2021年の上半期の外国人入国者数は35万人を超えています。また、総務省が発表した住民基本台帳に基づく人口や世帯数によると、福井県人口は昨年に比べ0.7%減少しているものの、外国人の人口増加率は3.14%で全国トップです。

震災や台風などの自然災害が多い日本に住む外国人の中には母国で経験しなかったような被災に遭遇するケースもあるかと思います。災害時に全ての人、特にユニバーサル対応が求められる人々にはどのような配慮が必要か考えてみましょう。

・歩行の介助を必要とする方
力になりたい気持ちは伝わりますが、車いすを勝手に押す、肩を急に組むなどすると当人も驚いてしまいます。本人にどのような支援が必要か尋ね、一言声をかけてから支援を行いましょう。移動する場合は段差が少ないところを確認し、誘導しましょう。
避難所では手すりがないトイレを使用する可能性もあります。必要な支援があるか本人に確認し、可能な範囲で協力しましょう。

・聴覚や視覚での介助を必要とされる方
急に肩を叩くなどせず、「あなたに話かけています」ということを伝えサポートが必要か尋ねてください。必要ならば本人のそばで周囲や現在の状況を伝えましょう。手帳やスマートフォンの画面などの文字やジェスチャーで視覚的に情報を伝えることも有効です。
聴覚に障害をお持ちの人に距離や方向を伝える場合には、曖昧な表現をせず「10時の方向に10歩です」など相手に分かりやすい表現で伝えましょう。

・外見ではわからない障害をお持ちの方(内部障害・精神障害など)

一見障がいを持っているようには見えない方もいらっしゃるかもしれません。パニックになっている人には落ち着かせるためにも、ゆっくり、はっきり、簡潔に話すことが重要です。
内部障害を持っている方からの支援を依頼された場合、避難所では食事やトイレ等配慮を考える必要があります。健康状態や配慮すべきこと、必要な医薬品などの確認をしましょう。

・他言語でのサポートを必要とする外国人
日本のように避難訓練を受けた経験もなく、災害時に何をしていいのか分からずパニックになってしまうことがあるでしょう。情報や支援が他の被災者よりも届かないといったケースもあり、避難所でどのような行動を取ればいいかわからないということも考えられます。同じ被災者として必要な情報を確実に届けるために、周囲の人と協力し、英語や母国語を話せる人を見つけて避難所での過ごし方、ルールやマナーなどを丁寧に説明しましょう。

有事の際は自身のことで精一杯であり、なかなか他の人へ手が回らないだろうと思いますが、同じ場所で共に生きる・助け合うことを考え、配慮を要する方へのサポートの参考として欲しいと思います。

この記事を書いた人

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R
接遇業とUXデザイナーの二足のわらじを履いてます。
ユーザーへの共感を大切にし、寄り添った課題解決を心がけており、デザイン思考を接遇業へ活かせないか、試行錯誤中。
おもてなしや心配り、マナーについても日々勉強しています。