神戸の西、押部谷町で代々石油店を営んでいる藤岡石油店。地元密着型企業で、ガソリンの提供だけでなく、レンタカー、自動車販売、農業体験、農器具レンタルなど幅広い事業を展開している。その代表の藤岡さんは、PTA会長や消防団の団長としても活躍しており、押部谷には欠かせない存在だ。そんな藤岡さんにこれまでの活動のこと、今後の展望について伺った。
新たな事業を通して地域を元気に
神戸、三ノ宮から車で30分ほどの距離にある押部谷町。北側には西神ニュータウンの住宅地、南側には自然豊かな田園が広がっている。この押部谷を愛してやまないのが藤岡さんだ。
「ここは三宮や明石、三木まで30分ほどで行ける距離にありながら、大自然が広がっている。利便性がよく、住み心地がいいんです」と藤岡さん。
押部谷で生まれ育ち、大阪の大学へ進学。卒業後は西神オリエンタルホテルで働いていたというが、地元のガソリンスタンドが次々と閉店し、実家のSS店に顧客が集中したため、家業を手伝うことになった。ホテルを退職するのは名残惜しかったが、やるからにはがんばりたいと新規事業やイベントを次々に立ち上げる。
例えば、SS店として朝割り(午前7~9時、5/10現在のレギュラー価格155円とのこと)を導入したり、洗車のコツをレクチャーするワークショップを開催。また毎月1万円から新車を購入できるフラット7やカーマッチという中古車販売の事業。レンタカーサービスは、6時間2000円とリーズナブルで、地域の人々が病院や役所、買い物など、第二のマイカーのように利用しているそうだ。さらに農業サービス業もはじめた。元々は兼業農家だったというが、一人でほそぼそと取り組むより、仲間たちと一緒にワイワイやるのが好きな性分。農業を通して人々の交流を生み出したいと、農業体験のイベントを定期的に行っている。
こうしたさまざまな取り組みを通して、地域に活気を与えている。
地元を守る消防団の団長として
仕事だけではない。2019年から消防団に所属し、昨年からは団長としても活動している。「後輩に誘われただけですよ」と謙遜するが、概ねボランティアの域を超えた活動内容であるのは間違いない。
地方の消防団の存在はとても重要だ。災害発生時、場所によっては本職の消防隊員が駆けつけるまでに時間を要することがあり、地元住民で構成された団員たちで先に活動をはじめる場合も多い。防災の担い手として必要不可欠な消防団だが、時代の変化や人口減少などが相まって、1950年代には200万人以上いた消防団員の数は年々減少し、今では90万人以下となっている。
押部谷の消防団では、普段は消防資機材の点検や地域のパトロールを行いながら、地域の安全を見守っているという。そして、災害が発生すれば出動し、消化や救助活動を行う。特にこれからの集中豪雨や台風が増える時期には、出動回数も多くなってくる。
地域を守るためにも、藤岡さんのような消防団員の存在は、町を挙げて大切にしなければならないと思う。
また、消防団の活動とは別に、防災訓練のイベントを主催したりと、さまざまな防災活動に取り組んでいる。2021年に行った「防災イベントKOBerries♪LIVE」では、ご当地アイドルのKOBerries♪(コウベリーズ)にも参加してもらい、大いに盛り上がったそうだ。
こうして地域住民として、大切な故郷を守っている藤岡さん。防災活動だけなく、2016年小学校のPTA会長や神戸市西区PTA連合会会長も歴任していたというから凄い。
町の人の生きるエネルギー供給点へ
藤岡さんには高校生の息子さんがいる。
「息子が4代目を継ぎたいと言ってくれてまして。新車販売やったり、農業やったり、イベントやったり、右往左往しながらも、息子のためにどうにか形づくって会社を残したいですね」と語る。
1967年から藤岡石油店はプロパンガスの販売という、家庭用エネルギーの供給からスタートした。それからガソリンスタンドや自動車販売、農業などの新しい事業を展開し、人が動いたり、生きるためのエネルギーを供給する事業へと発展してきた。
「これから先、地域の人々が生きるために必要なあらゆるエネルギーを創出していきたいと思っています」
地方で奔走する人々を取材する度に、思うことがある。魅力ある人がいるからこそ、魅力ある町になる。あなたが素敵な町に住んでいるのなら、それは素敵な誰かがその土地で奔走した過去に住んでいるのだ。
藤岡 陽平 1977年、神戸市西区押部谷生まれ。2006年、西神オリエンタルホテルを退社し、株式会社藤岡石油店に入社。2009年、車買取サービス開始。2012年、統括マネージャーになる。2016年、地元小学校のPTA会長、神戸市西区PTA連合会会長に就任。2016年、レンタカーサービス開始。 2019年、株式会社藤岡石油店、代表取締役に就任。 趣味はギター。過去には三宮駅や京橋駅前で路上ライブも。 |
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