料理名がつけられておらず、ごく普通に家庭の食卓に並ぶ『名もなき料理』を研究しているのが、山口県出身の料理人・守永江里さん。今回は「さわが好きな柑橘サラダ」をご紹介。
非日常にはいつもの食材が手元にない。そんな時に、ありもののなかでどう料理するか。思考を柔らかくする料理記事です。
[名もなき料理とは]
さわが好きな柑橘サラダ
4年前、地元で開催させてもらったイベントに、友達のさわが来てくれました。そこでビュッフェスタイルでお食事をしていただいた中の一品、夏みかんの香りのするサラダが気に入ってくれたようです。その後のイベントでもリクエストしてくれたり、うちに遊びに来た時に食べたいと言ってくれたりします。
この料理は一言で表すと、地のものを地のもので和えたもの。具材には長州どり、わかめ、にんじんを使いました。わかめは海人である親戚のおじさんが潜ってとったもの。高齢のおじさんは、「もう今年が最後かもしれない」と毎年言いながらうちへ届けてくれます。柔らかくて香りがあるこのわかめが大好きです。
帰省すると他に何をするでもなく、地場野菜や海産物、農産物をとにかく楽しみます。あらゆる新鮮な食材が揃っていて、近所で手軽に手に入るので、陽の当たる実家の台所に立つと作りたいもののイメージがどんどん湧き、台所から離れられなくなります。お客さんと会話する時間や食べていただく時間はもちろん楽しいのですが、食材が良いおかげで、仕込みしている時はとっても心が躍ります。野菜の皮を剥く時、魚の骨をとる時、肉をゆっくり加熱する時。そんな小さな作業でも手元の食材がキラキラと輝いて楽しませてくれます。
でもやはり、お客さんに喜んでもらえることが何よりです。さわが好きと言ってくれたから、何度も作る機会ができたし、私にとっても思い出に残る一品になりました。俵万智さんのサラダ記念日のように「これ美味しいね」って言ってもらえると、作った者としては本当に記念日になるものですね。
さわは、マヨネーズが苦手です。このサラダにはマヨネーズを使っていますが、柑橘の香りが入ることで爽やかになり、美味しく食べられると言います。調味料の配合を自由に変えて、お好みの味作りを楽しんでぜひ作ってみてください。
【 材料 】
・鶏胸肉 230g(小1枚)
・にんじん 1/3本
・乾燥わかめ 6g
・塩 小さじ1/3
・胡椒 適量
・料理酒 または 水 50ml
・ポン酢 小さじ2
・マヨネーズ 小さじ2
・塩 ひとつまみ
・胡椒 適量
・柑橘の皮 (あれば)
【 作り方 】
(1) 鶏胸肉を蒸し煮にする。縦半分に切り、包丁やフォークをさして穴を開ける。塩小さじ1/3と、お好みの量の胡椒をすり込む。酒か水50mlを入れ、蓋をして火にかける。沸騰したら弱火にして3分茹でる。裏返して火がしっかりとおるまで9分くらい加熱する。火が通ったら蓋を外し、肉の断面を下にして、火を強めて水分を完全に飛ばす。ボウルや皿に入れて、粗熱をとっておく。
(2) わかめは水で戻し、よく洗って絞り、ザルに上げておく。
(3) にんじんは食べやすい大きさに切り、好みの硬さになるまで茹でて火を通す。
(4) 具材の下ごしらえが済んだら、和える。全ての具材をボウルに合わせ、塩ひとつまみ、胡椒、ポン酢を入れてよく混ぜる。マヨネーズも入れて、再度よく混ぜたら、完成。器に盛って好みで柑橘の皮を削り入れていただく。
私は地元の特産品、夏みかんが大好きです。実家の庭で採れるものを食べ頃になると送ってもらいます。身も、皮も、美味しく楽しみますが、満開に咲いた花の香りだけはやはり帰らないと体感できません。季節ごとに特別な楽しみ方が尽きない町は良いですね。
次回は『あちゃまの水餃子』をご紹介します。
この記事を書いた人
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鎌倉市在住の料理人です。『もりえり。』と呼ばれています。
数店舗の日本料理店で調理を学びましたが幼少期より母親に教えてもらった愛のある料理が学びの基盤です。
苦手なことは、言葉で想いを伝えること。
得意なことは、料理で想いを伝えること。
趣味は料理以外にフットサル、釣り、スケボー、寝ることです。
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