大東建託のベンチャー制度から生まれた
防災サブスク「ぼくまる防災ていきびん」


「ぼくまる防災ていきびん」は、非常食と防災情報の定期便サービスを行う、大東建託(株)のベンチャープロジェクトのひとつだ。こちらを企画運営しているのが、事業戦略室の浅野さんと高木さん、大東建託グループ会社の船本さんの3名の社員だ。今回は、浅野さん、高木さんに、プロジェクト発足の経緯などについてお伺いした。


社内ベンチャーとして認められた防災プロジェクト

いい部屋ネット」でおなじみの大東建託だが、2014年に賃貸住宅業から生活総合支援企業を目指し、2023年度を最終年度とする中期経営計画「新5カ年計画」を策定。成長戦略の一つとして、新しい事業案を社内ベンチャーとして募集することになった。そこで、人事部にいた浅野さんとグループ会社の船本さんがアイデアを探るため、世の中の「不安」「不満」「不平」などさまざまな「不」についてディスカッションしていたとき「災害」というワードが出てきたそうだ。
「災害に対する不安は誰にでもありますよね。防災への取り組みは“ぼ・く・ラボ(防災と暮らしの研究室)”で既に行っていましたし、生活総合支援企業としても何か取り組めることがあるんじゃないかと思いました」と浅野さん。
防災を軸にした事業をしたいと浅野さんは、総務部で企業防災を担当していた高木さんをチームに誘って、進めることにした。

このベンチャープロジェクトは、2020年から社内ベンチャー制度「ミライノベーター」として本格化。第一回目の募集では451件ものアイデアが集まったそうだ。浅野さんたちのチームは防災食のサブスク事業でチャレンジしたが、失敗に終わったという。
「悔しかったですね。たくさんの方にご協力いただいてきたので、メンバーだけのプロジェクトではなくなってきていました。これを実現させなければ、という強い思いで再チャレンジしました」と浅野さん。
2021年、2回目のコンペにチャレンジし、無事に審査を通過して、社長賞を受賞。現在は「防災サブスク」というプロジェクト名で、非常食の販売や防災情報の提供といったサブスクサービスの実証実験を行っている。

企業防災を10年支える、高木さんの選んだおいしい非常食

ぼくまる防災で一番のおすすめは「ぼくまる防災ていきびん」というサブスクサービスだ。3ヵ月に1回、1日に必要な非常食の詰め合わせが届けられる。家族向け「4人1日分おいしい非常食」「3人1日分おいしい非常食」、単身者向け「1人1日分おいしい非常食」の3種類あって、毎回違う味が楽しめる。中身はパンやおにぎりといった主食と、ハンバーグや肉じゃがといったおかずだ。どれも長期保存できるが、保存料や添加物ができるだけ少ない商品を入れているという。商品を選定しているのは、10年にわたって社内の防災業務に従事してきた防災士の高木さんだ。

「いままで総務部で企業防災を担当し、平時には非常食を検討したり、災害時にはその対応に当たってきました。また弊社本社ビルが品川駅前にあり、被災した帰宅困難者の一時的な受け入れを行う品川駅滞留者対策協議会にも参画していたので、そこで防災士の資格を取得する機会も得ました。このプロジェクトに携わることになり、非常食の展示会へ行ったり、さまざまな備蓄食の提案を受けた経験を活かして、簡単においしく食べられる非常食だけを厳選しました」

このおいしい非常食にプラスして、同梱されているのが「防災まめ知識」カードだ。
「東日本大震災で岩手県釜石市の小中学生の99.8%が津波から逃れることができた。それは普段から防災教育をしっかり続けていたからだと言われています。やっぱり知識は大切で、それをアップデートしていくことも必要ですよね。そこで購入者さんの防災知識の向上につながればと、NPO法人プラス・アーツ永田宏和さん(※1)の協力もあり、定期便に防災の情報カードをお入れしています」

ちなみに、ぼくまる防災ていきびんの食品は、WEBショップはもちろん、暮らしに役立つプラットフォーム「ruum(ルーム)」(※2)や鈴鹿市のふるさと納税などからも購入できるそうだ。

災害から自分を守る力を備えてほしくて

現在、防災サブスクは実証実験の段階ではあるが、もっとたくさんの人に認知され、喜んでもらえる商品づくりをしたいと、チームの思いは強い。
「防災サブスクを通して、より多くの方の防災自助力を高めることができたらと思っています。自分が助からないと、大切な人も守れませんよね。まず自分の命は自分で守ってほしいというのが、商品に込められたメッセージです」

防災対策には、自助、共助、公助の3つの備えがあるといわれる。自助は、自分を守るための備え。共助は、地域やコミュニティでの備え。公助は、国や行政の備えのこと。災害の規模が大きくなればなるほど、公助の力は届きにくい。自分の身は自分で守らなければならないのだ。
いまからでも遅くはない。まずは自分から防災力を身につけていこう。


(※1)NPO法人プラス・アーツ 理事長 永田 宏和(ながたひろかず)氏

1968年、兵庫県西宮市生まれ。大学で建築を学び、大学院ではまちづくりを専攻。1995年の阪神・淡路大震災をきっかけに、「なんとか震災復興にかかわりたい」と考えるようになる。それから10年後の2005年、兵庫県と神戸市が実施した震災記念事業の一環として楽しく学ぶ新しい形の防災イベント「イザ!カエルキャラバン!」の開発に携わる。大手ゼネコンに勤務したあと、企画・プロデュース会社の立ち上げを経て、NPO法人プラス・アーツを設立。
(※2)ruum(ルーム):大東建託グループの入居者様に加え、一般消費者様も利用可能な「暮らしに特化」したプラットフォーム。新生活を始めるにあたり必要なライフライン、インターネットなどのお得なプラン紹介や、日々の生活を楽しむためのオンラインコンテンツの配信、サブスクリプションサービスやクーポンの提供など、利用者様の暮らしに役立つ様々な情報を発信。暮らしに役立つ情報を発信するWeb・アプリサービス。入居物件の契約、不用品の回収、エアコンの掃除、ネットショッピング機能など暮らし全般をサポートする。

ぼくまる防災ていきびん
2019年、大東建託株式会社 社内ベンチャーの一環で防災食のプロジェクトを立ち上げる。2021年5月、コンペ最終審査通過し、社長賞受賞。同年11月、WEBショップ「ぼくまる防災STORE」を立ち上げ、非常食の販売や定期便サービスを開始する。

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この記事を書いた人

しまかもめ
しまかもめフリーライター
(株)大阪宣伝研究所にコピーライターとして勤務。その後、デザイナー、編集者、フリーペーパー営業、ネットショップ企画運営を経て、独立。神戸市在住の3児の母。防災に携わる人々の取材をしています。