「風を感じられる人は些細なことに気づく」説を考えてみる


関西生まれの編集者。ヨガやボディワーク、旅の本などに携わり、旅とヨガは似ているなと思う今日この頃。旅や転居、災害など日常と非日常の狭間で、自分を取り巻く〈内〉と〈外〉の環境を心地よくするために役立つアイテムを紹介する。今回は、風が見える本です。

頬に当たる風は多少の暑さを吹き飛ばす

東京の夏は過酷。東京2020オリンピックの時にも話題になりましたが、熱帯気候の国に住み始めて、日本の夏は熱帯並み……いや、それ以上の厳しい気候だと実感しています。その理由は様々ですが、風が吹き抜けられないことが一つの要因ではないかと思うのです。湿度を含んだ生暖かい空気が滞留することほど不快なものはありません。

植物や土の香りを含んだ空気が通りすぎる時の心地よさは、多少の暑さを吹き飛ばす威力があります。

地蔵盆からの帰り道。汗ばんだ髪と頬を撫でるように吹き抜ける風。記憶の中の一番好きな風です(多少美化されているのはご愛嬌)。

地元を離れて久しいですが、大人になってから気持ちのいい風の記憶が途絶えてしまった気がします。外を駆け回る機会が少なくなったからだと解釈していましたが、心の余裕のなさが関係していたのかもしれないと、最近ふと、そんな考えが頭をよぎりました。

「風を感じられる人は些細なことに気づくことができる」説はあながち間違いじゃない?

どんなものを食べても味がしない、匂いがしない、あっという間に時間がすぎる。いい意味で集中している時にも言えるかもしれませんが、五感が鈍ったり、特定の五感が鋭くなったりした時に自分の周りから風は消えてしまう。

視野が広がれば、風はまた吹き始める。

風のように「目に見えないもの」に意識が向けられるようになれば、身の回りの様々なものが見えてくるんじゃないかなと。そういう心の状態でありたいなと思うのです。

名前をつけられるほど親しまれている風

『窓から見える世界の風』は、画家であるnakabanさんと、気象学者の福島あずささんの二人が手がけられた本です。

目に見えない、手に取ることもできないものを絵や言葉で表すという画期的な本です。

自然や人が引き起こした教訓を忘れないようにと名付けられたものから、愛しい風景を表したものまで。地域の人に親しまれている風が世界中にあることを知りました。

春一番だけが風ではありません。

もちろん名前がなくても記憶に残る風は世界中にあります。空港を出た瞬間に頬に当たる風には行き交う人たちや植物の匂いを含んでいるし、ローカルな人たちで賑わう屋台から流れてくる風でお腹が鳴る。目に見えないものが意外と旅の土産話になりやすいものです。

そろそろ異国に足を運びたいですね。

窓から見える世界の風』(創元社)

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この記事を書いた人

tutu.
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編集者。
(株)角川クロスメディアに勤務。その後、都内の編集プロダクションにてヨガやボディーワーク、旅の本などに携わる。関西生まれ、シンガポール在住の猫飼い。