災害に遭うのは自宅とは限らない
【加藤小也香の趣味・防災】


スマートニュース子会社で事業開発を担当している加藤小也香さん。「旅と旨いもんと旨いものを作る人」を愛する彼女の最近の趣味は「防災」。買って使って初めてその意味を理解する。そんな防災道を歩む加藤さんの体験記です。

今回は、年の初めの防災会議と10点セットについて。

新年おめでとうございます。年初早々から防災の話なんて、と思いつつ、いつ何があるとも分からないのが災害だからと思って、書いています。

いつ何が、と言えば昨年末、大雪による通行止めで最大2100台の車が立ち往生したという関越道のニュースは、皆さんも、ご覧になっておられましたでしょうか。中には40時間以上を車内で過ごした方もいらしたそうで、「もし自分だったら」と考えずにはいられませんでした。

情報が不十分で、当初は無論、自衛隊の姿など見られない。すぐに開通するだろうと鷹揚にかまえていたら、いつのまにか車の前後左右には雪が高く降り積もり、視界が悪くなっている。そんななか、外気は更に冷え込み、暗い夜が来る。

そのとき仮にガス欠寸前で、例えば暖房もかけ続けられない状態だったら。仮に水1本、チョコレート1つすら持っていなかったら。足元は薄いスニーカー、上着もただのコートで歩いて脱出する可能性すら薄いように思えたら。自分は何をどう後悔するのかな、と。

 

災害に遭うのは自宅とは限らない

いまや地震や水害などの「災害に備える」ということは、誰しもが少なからずしているのではないかと思います。ただそのとき、私を含め多くの人がどういうわけか在宅時の被災を想定し、様々の備蓄をしている気がします。でも災害は、決して自宅にいる際だけに起きるとは限らないのですよね。

東日本大震災のおりも、訪問先からとにかく帰ろうと決断したときには既にタクシー乗り場は大行列、コンビニやスーパーに寄っても買えるものが殆どなかった、という話をよく聞きました。

そんな「いつか」に備え、私が何を持ち歩いているか、を今回はご紹介します。それがこちら。

左から、①携帯電話の充電機 ②簡単な食べ物 ③水筒 ④連絡先入りホイッスル ⑤十徳ナイフ ⑥携帯ライト ⑦ラジオ ⑧折りたたみ傘 ⑨マスクなど衛生用品 ⑩常用薬

少ないな、と思われた方もいらっしゃると思うのですが、私が意識したのは、とにかく軽量にすること。ただでさえ、平素からどこへ行くにも仕事用のノートPCを担いでいるため、重いとすぐに持ち歩くのが嫌になってしまうと思ったから。災害はいつ起きるとも限らないので「毎日、欠かさず持ち歩ける」ことを重視した布陣にしています。

自家用車での移動が多い方は、また違った準備になるでしょうし、私も夏には塩飴や汗拭きタオル、冬は軽量のダウン、少し遠くに行く際には携帯トイレや光量の大きなヘッドライト、など季節や行き先に応じたものを加えることはあります。

 

交通システム障害への備え

選ぶうえで想定したのは、半日〜1日程度、帰宅困難な状況に置かれる可能性。

お住まいの地域にもよると思いますが、私がいる東京都では、大規模地震発生時には交通システム障害などにより517万人の帰宅困難者の発生が予想されており、焦って「移動・帰宅をしない」ことが求められています。

これは、余震や火災の発生や、群衆雪崩による圧死といった2次災害、大渋滞による救急車両の通行の妨げなどを防ぐため。そして「東京都帰宅困難者対策条例」により、民間施設に一時避難所としてのスペース開放や水道、トイレの提供を求め、ステッカー表示などもしています。

私が持ち歩いている最低限の水分や食べ物、常用薬は、仮に簡単に歩いて帰れる距離にいたとしても、一定程度は待機時間が生じるのを想定してのもの。甘いものは小さなお子さんやご老人に差し上げて心を落ち着かせていただくこともできそうですし、ね。

このほか停電を想定して小さなライトと、建物倒壊による粉塵などを想定し(今はコロナ感染抑止でも必要ですね)マスク。あとは落ち着いてからの徒歩帰宅に備え、日頃から1時間程度は苦にならず歩ける靴と、衣服は防寒も意識(特に足元は重要。極寒の東北被災地でもUGGのブーツは大活躍で、こんなになるまで履きつぶしました)。傘も、わずか89グラムしかない超軽量のものを選び、持ち歩いています。

あとは、倒壊物によって動けなくなったり、ガラス破片でケガをしたりといった最悪の事態も、一応は想定しています。気休め程度にしかならないかもですがキーチェーンにはホイッスルとミニナイフ。中には氏名や緊急連絡先、血液型などを記した紙片が入っています。財布には勿論、保険証やかかりつけ医の診察カード、現金(特に小銭)やテレホンカード(まだあったか!と言われそうですが)も常備。

 

情報不足への備え

もう一つ、強く意識しているのがいかにして情報収集をするかということ。

携帯電話でインターネット接続できれば、ニュースサイトや、自治体、気象庁、消防庁といった公的機関のホームページ、SNSなどを通じて状況把握ができるでしょうが、災害発生時、すぐに繋がるとは限らない。

検索不能に陥ったときに備え、知らない場所に行くときにはオフラインでも見られるよう地図のスクリーンショットを必ず撮りますし、家族との安否確認に使う災害用伝言ダイヤル(171)の使い方なども紙のメモと写真の両方で持ち歩いています。

また、普段は全く聴かないラジオも、これだけは常時携帯。ちなみに自宅には併せて、古いワンセグ対応のスマホも用意してあり(災害用に中古品を探して購入)、停電時にもテレビを視聴し、情報をとれるようにしています。

 

2021年、家族や大切な方との“防災会議”を

こうした私の“防災グッズ”の数々は、基本的に日常的にも使っているものを転用したものですが、1つひとつ揃えるのが手間、という方には市販のセットも色々とあります。

最近、よく目にするのは無印良品のもの、でしょうか。「携」「持」「備」の3種類があり、今回ご紹介したような常日頃から備える目的には、ハンカチやマスク、家族との連絡ルールなど記載するシートがコンパクトに収められた「携」。避難所などへの一次避難に便利そうな「持」には他に耳栓やエマージェンシーシート、ヘッドライトなど、自宅用になりそうな「備」にはキャンドルや軍手なども入っているようです。

既に備えがある方には割高感があるかもですが、家族や大切な人にこうしたものを「一緒に万一に備えましょう」というメッセージを伝える意味で贈るのは素敵かも。

 

同じ文脈でもう一つ、良いなと思ったのが、「LIFE GIFT」というカタログギフト。消火器やランタンなどデザイン性の高い防災グッズ16種類のなかから好みのものを贈った方に選んでもらえる、というもの。

こうした贈り物をきっかけに、 万一のときにどうやって連絡を取り合うか、どこで集合するかの取り決めや、実際に「災害用伝言ダイヤル(171)」を使っての演習など、身近な方々との“防災会議”をしてみるといいかな、と思います。

まさかのときに、その場の判断力でできることも勿論、多々ありますが、できないことについては少しでも後悔を減らせるように準備を。

皆様にとって2021年が安全で、心穏やかなものになりますよう、お祈り申し上げます。

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この記事を書いた人

加藤小也香
加藤小也香
旅と旨いもんと旨いものを作る人を愛する48歳。最近は趣味・防災道を邁進しながら、第2の故郷と信じる福島・郡山市の食材をひたすら消費中。本職は、日経BP記者、グロービス広報室長/出版局編集長、trippiece執行役員を経て、現在はスマートニュース子会社で事業開発をしています。