日常に加えたい、ちょっといいもの。その“ちょっと”に気付けることで、有事の際にも心が豊かになれそう。
ライフスタイル、デザイン、ファッションの世界で、ブランドやプロジェクトを作る人の想いをまとめる、伝える。フリーランスPRのキム サンエさんが、日々の生活に加えたいちょっとうれしくなるもの・ことをご紹介。
田中さんという方が作っているカシミアのセーター
毎年、秋が深まる季節になると、あるお便りが届くのを楽しみにしています。田中さんのセーターの、受注会のお知らせです。
友人に誘われて、初めて訪れたのは数年前。それから毎年通っていますが、ブランド名はなく、田中さんという方が作っているカシミアのセーターだよ、という説明をはじめに聞いた時は、「?」と首を傾げました。「CASHMERE KNIT PROJECT」として、毎年1月から3月ごろまで国内のいくつかのお店と東銀座のオフィス兼アトリエで受注会を開催し、そこでしか手に入らないカシミアセーターが口コミで大人気になっているということでした。
東銀座の会場では、シンプルなテーブル数台に、セーターが5,6種類、2~3,4色ずつ、すっきりと並びます。見るからに気持ちよさそうなカシミア100%のセーターたちは、いたってシンプルでベーシックなフォルム。一見どこにでもありそうなのに、試着してみると絶妙なシルエットで、首元、肩のライン、身幅、すべてに細かな配慮が感じられます。そして、やはり何よりも肌触りが最高で、まるでちょうど良い湯加減のお風呂に入っているように気持ち良いのです。首を通した瞬間に、ほぉっと安心するようなセーターに初めて出会いました。
幸せが集まった田中さんのニット
カシミアニットというと高額なイメージがありますが、田中さんのニットはとても上質なのにお手頃価格。なぜかというと、受注会でのオーダー分しか生産せず、無駄な在庫が発生しないから。ということは、作られた全てのセーターが、どこかの誰かの手元に必ず届いて愛用されるということでもあります。毎年まったく同じ形で色を変えていくスタイルで、品数も色数もミニマルなコレクションは、その分じっくりと厳選されていて何年経っても飽きることなく、逆に愛着が増していく魅力があります。半年ごとに色や形、素材を変えて多くの商品を生産しては、残ったものをセールにかけたり廃棄したり、ファッション業界で当たり前とされているサイクルを考えると、田中さんのニットは、作る人と着る人と地球、みんなにとって幸せなニットといえます。
一度着たら手放せなくなってしまって、はじめの1着からどんどん増えていく田中さんのニット。特に去年の冬は、もうこれしか着ていないのでは、というほど沢山着ました。カシミアということで少し不安を感じるケアの仕方も、丁寧に説明していただけたので、一生ものとして長く着ていこうと思っています。
今年はもう締め切ってしまったということですが、受注会のスケジュールは毎年インスタグラムでお知らせされるので、ご興味のある方は来年を楽しみに、少し待ってみてくださいね。きっと、何年も共に過ごせるやさしいパートナーのようなセーターに出会えるはずです。
「2022年はモダンで洗練された定番的なカラーの一方で、少しでも明るく、そしてハッピーな気分を味わっていただけるようなカラーをいつもより多く選びました
Poppy, Ivy, Comugi, Poplar, Sky, Surf, Candy.」と、選択肢がまた増えそうです。
■田中さんのニット
CASHMERE KNIT PROJECT by ARROW57.
この記事を書いた人
- ライフスタイル、デザイン、ファッションの世界で、ブランドやプロジェクトを作る人の想いをまとめる、伝えるためのお手伝いをしています。連載では、日々の生活にあると、ちょっとうれしくなるものやことをご紹介していきます。
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