「防災女子」とは、2014年に結成された、女性の視点で防災の啓発活動を行うサークルだ。神戸のポートアイランドと西区にキャンパスをもつ、神戸学院大学の現代社会学部社会防災学科の女子学生で構成されている。今回は、代表の佐藤菜都さんにお話しを聞くことができた。
「防災女子と出会うまでは、防災ってちょっと固いイメージだったんですよね」と佐藤さん。防災女子のことは、新入生のサークル勧誘のときに知ったという。
「“やってみたくなる防災”や“女性の視点を活かした防災”という防災女子のコンセプトを聞いて、防災を身近に感じるアプローチの方法もあるんだって、とても新鮮に感じました」
もともと防災について意識しはじめたのは、高校2年生のときだったという。TVで特集されていた東日本大震災の津波の映像をみて「どうしてこの人たちは亡くならなければならなかったんだろう」と心が痛んだ。その時期、ちょうど進学先を探していて、防災について学べる神戸学院大学の社会防災学科の存在を知ったという。
「社会防災学科に入れば、あの時どうして?と思ったことが学べるかな、と思いました」
2017年、佐藤さんは神戸学院大学現代社会学部社会防災学科に入学。学科では防災の基礎を体系的に学び、ゼミでは災害情報、災害報道、災害ボランティアなどを研究。
1年生から防災女子の活動に参加し、3年生から副代表、4年生になった今は代表を務めている。
防災女子の活動としては、地域の団体、企業や学校、などを訪れ、防災にまつわる講習会やワークショップ、イベントブースでの災害時レシピのデモンストレーションなどを行っている。
2016年から大丸神戸店とタッグを組んで、地域の人々の防災の意識を高める防災イベントを行っている。
大丸神戸店は、神戸の旧居留地に位置する街のシンボル的存在だ。1995年の阪神・淡路大震災時、旧居留地は壊滅状態だったが、自ら損壊しながらも「大丸の灯は消さない」として、1/3の売り場面積でいち早く開店。今もなお市民に愛される百貨店だ。
防災女子のメンバーは毎年、この大丸神戸店の食材を使って、災害時でも簡単に調理できるレシピを考案したり、地下1Fの食品売り場にて、作り方のデモンストレーションを行ってきた。
佐藤さんは2年生のときに参加した大丸とのコラボフェアで印象に残ったことがあったという。
仲間たちとポリ袋で調理できるスパニッシュオムレツのデモンストレーションを行い、試食を配っていた。お客さまの中に、ベビーカーを押したママもいて、オムレツの試食をサッとひとつ手渡したという。そのママはベビーカーに乗っているこどもにオムレツを渡して、すぐに立ち去った。だが、しばらくして、そのママは佐藤さんの元に戻ってきて「卵や野菜が苦手で食べないのに、試食でもらったオムレツをたくさん食べた。ぜひ作り方を教えてほしい」と笑顔で声をかけてきたそうだ。
佐藤さんは、作り方を説明して、災害時のレシピが載っているチラシを渡すことにした。
「おかあさんは、子どもが苦手なものを食べてくれた嬉しさから、戻ってきてくれたんですよね。それ自体は防災ではないんですけど、もしかしたら家に帰ってチラシをみたり、実際にオムレツを作ってくれたかもしれない。そう思うと防災に関心を持ってもらえるきっかけになったのかな、と。気軽にできる備えを自然に伝えることが防災女子のやりたいことなので。うれしかったですね」
防災と構えず、流行りのファッションを楽しむように、カジュアルに取り組める空気感が、防災女子らしさだ。
2020年はコロナの影響で、活動がかなり制限されてしまったが、2021年はオンラインを通じて徐々に再開している。
「コロナ禍の中、できることは限られていますが、オンラインを活用して、動画を作成したり、SNSに力を入れるなど、やれることをやっていきたいです。今はオンラインを通して日本中にアプローチできますよね。コロナ以前は、神戸を中心とした活動でしたから。今までとはまた違う形で前向きに活動したいですね」
卒業後は、防災用品のメーカーで働く予定だ。
「今まではみなさんと直接お会いして防災のことを伝えてきましたが、卒業後は仕事を通して伝えていきたいと思っています。これからもずっと防災とは関わっていきたいですね」
防災女子のような若い力が活躍する日常が、緊急時や地域の将来を支えていくのだろう。
★ポリ袋でつくる防災食「スパニッシュオムレツ」 |
材料(二人分) 卵3個 ウインナー2本 パプリカ(赤)1/3個 ほうれん草(冷凍)30g コーン缶30g 塩・こしょう(適量) ケチャップ(適量)※お好みで 調理器具 作り方 |
佐藤 菜都 |
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