3.11で島移住への思い強く。
10年越しのゲストハウス「家島ハレテラス」をオープン
中西和也さん


姫路から定期船で約30分。瀬戸内海に浮かぶ家島諸島。大小44の島からなり、約4500人が住んでいる。神社で遊んだり、駄菓子屋に急ぐ子どもたちや、道路の脇で立ち話をするおばちゃんや漁師のおっちゃんたちをよく見かける、昔ながらの懐かしい雰囲気が漂う島だ。この島に移住し、主に観光ガイドを行いながら、念願のゲストハウス「家島ハレテラス」をオープンしたオーナーの中西さんにお話しをお伺いした。

家島唯一の一棟貸しゲストハウス。晴れの日には姫路港を一望

2020年4月にオープンした「家島ハレテラス」。家島の玄関口、真浦港で下船し、どんがめっさん(真浦港前にある大きな亀の石像)裏の階段を70段!上がった高台にある古民家ゲストハウスだ。
お部屋は全部で6室。洋室1、和洋室1、和室が3室とリビングダイニング(和室)がある。全てのお部屋から港の風景を見渡せ、天気のいい日には姫路港まで一望できる。キッチンには調理器具があるので釣った魚を捌いたり、洗濯機も完備しているので海で遊んだあとも安心だ。テラスには屋外風呂があり、子どもたちの水遊び場としても利用できる。

一棟貸し切りの一律料金なので、他人の目を気にせず、大人数で泊まることができるのもうれしい。
「コロナの影響もあり、複数の友だち世帯で集まるのはまだ難しい場合もあると思いますが、ここなら密もありません。みなさんゆったりと過ごされています」と中西さん。

素泊まりなので、食事は島内お好きなところで。姉妹店「海がみえるカフェ スコット」ではランチ・ディナーが楽しめる(ディナーは要予約)。おすすめは旬の海鮮丼と真鯛のフライ。専属のシェフが腕を振るってくれる。瀬戸内海をイメージしたクラフトビールや姫路の日本酒も人気で、昼からビールを楽しむ島外からのお客さんもおられるとか。

1レンタサイクルやオート三輪自動車を借りられるので、1周10キロほどの島内を巡ることもできる。
「帰り際、2泊すればよかった、とおっしゃるお客様も多いですね。連泊だとさらにゆっくり楽しめると思います」と中西さん。
忙しい日常を離れ、海沿いや細い路地をのんびり歩けば、島ののどかさに癒されそうだ。

震災との縁、島の暮らしで防災を意識するように

「家島ハレテラス」や「海がみえるカフェ スコット」を運営している中西さん。元々は熊本の大学で建築を学び、土木施工管理会社や都市計画系のシンクタンクで働いてきた。大好きな建築に携わりながらも、これからますます人口が減少していく日本で、新しい建物を生み出すよりも、まずは魅力ある「まちづくり」が先なのでは、と考えるようになったという。


そんな中、島の主婦で結成されたNPO法人いえしまが主催する「ゲストハウスプロジェクト」と出会う。そこでプロジェクトのひとつだった、観光コーディネーターを養成する「いえしまコンシェルジュ」講座に参加することになった。この企画で出逢った島民のおばちゃんたちとの交流をきっかけに、家島への移住を決意する。

その後、大阪で働きながら、家島移住に向けて準備していた矢先に、東日本大震災が起きた。
「現実には信じられない光景を見ながら、やっぱり自分のやりたいことにチャレンジしよう、という決意を固くしました」と中西さんは語る。
家島への思い強く2011年4月に移住し、「いえしまコンシェルジュ」として本格的に活動を開始。翌年には観光ガイドをスタートさせた。


2016年のゴールデンウィークには、大学時代の友人が熊本から来島する予定だった。しかし同年4月に熊本地震が起こり、計画は中止に。反対に中西さんが熊本へ向かい、復興ボランティアを行った。

「島は自然災害の影響を受けやすいですし、震災のこともあって、防災への備えは大事だと実感しています」
島民に備蓄は欠かせない。台風や豪雨で船が欠航することもあるからだ。島の住宅は本土に比べて収納スペースが多く、冷蔵庫とは別に冷凍庫を設置している家庭も少なくない。
中西さんは震災や島での生活を通して防災の大切さを痛感。水や食料などを備蓄し、定期的に消費しながら買い足すローリングストックを行っているそうだ。環境ゆえに防災意識が高くなるのだろう。
島で暮らすということは、自然と上手につきあうということなのだ。

離島でのまちづくりは、これからの日本の先行事例に

観光ガイドツアーからはじまり、カフェやゲストハウスの企画・運営まで、10年の歳月をかけて取り組んできた中西さん。
「もともと建築士であり、移住当初から空き家を利用した民泊やゲストハウスの立ち上げを考えてきました。宿泊施設の条件が厳しく、スムーズにはいきませんでしたが、たくさんの方の協力があって実現することができました」

2019年には「家島空き家対策協議会」を立ち上げ、家島への移住者支援のボランティアも開始。これまで8組の移住者をサポートしてきた。
「既に人口の減少している家島でまちづくりに取り組み、結果を残すことが、今後の日本の先行事例になると思いチャレンジしてきました。また、移住当初から“島の暮らしが何よりも魅力だ”という発信を続けてきて、その思いは今も変わっていません。まずは一度遊びにきて家島のことを知ってほしいですね」と中西さん。

過去15年間で約5割もの人口が減少し、島民の約半数が65歳以上という家島本島は、日本の未来の問題に既に直面しているといえるだろう。一方で年間8万人ほどの観光客が来島し、海洋レジャーや島の食を楽しんでいる。観光業は島の活性化に欠かせない柱のひとつとなのだ。
いち早く中西さんのような熱量をもった若者を巻き込んだ家島は、“離島創生”のトップランカーといえるかもしれない。

中西 和也(なかにし かずや)
1985年生まれ、大阪市出身。2007年、熊本の大学を卒業。土木施工管理会社や都市計画系のシンクタンクに勤務。2009年、NPO法人いえしまの「ゲストハウスプロジェクト」に参加。2011年、家島へ移住し「いえしまコンシェルジュ」として活動開始。2012年、観光ガイドを開始。2014年、いえしまコンシェルジュ合同会社設立。2018年、「海がみえるカフェ スコット」オープン。2019年、家島空き家対策協議会を設立。2022年、ゲストハウス「家島ハレテラス」オープン。2級建築士。
趣味は、子どもたちとのお散歩。最近はダイエットも。夢のシックスパックめざして日々鍛錬中。

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この記事を書いた人

しまかもめ
しまかもめフリーライター
(株)大阪宣伝研究所にコピーライターとして勤務。その後、デザイナー、編集者、フリーペーパー営業、ネットショップ企画運営を経て、独立。神戸市在住の3児の母。防災に携わる人々の取材をしています。