大阪市内にも4Mの津波が。災害時の「まさか」をリアルに体感。「あべのタスカル」の体験型防災学習ツアー


天王寺駅の真上に高くそびえ立つ、あべのハルカス。その近くに「あべのタスカル」という大阪らしいユニークな名前の防災センターがある。最新技術を取り入れた15のエリアを回るツアー形式の体験型防災学習施設だ。いつも予約でいっぱいの評判の施設だという。今回はこちらの体験ツアーについてご紹介したい。
天王寺駅から西へ徒歩10分、あべのフォルサの3Fにある「大阪市阿倍野防災センター あべのタスカル」。大阪市消防局管轄の施設で、2019年に時勢を鑑み、最新技術を取り入れるべくリニューアルされた。
A(2時間)B(1時間半)C(1時間)D(30分)E(小中学校等の団体向け)の5つのツアーがあり、ガイドのお姉さんや元消防士の方の解説を聞きながらコースを回る。筆者ははじめての来館者向けのCコースに参加することにした。

迫力のタスカルシアターにて

まずはじめに「タスカルシアター」に案内された。ここは高さ6メートルのスクリーンで、迫力ある災害の映像を観た。今回は南海トラフ地震が起きた1日を想定したドラマだった。地震発生後、引き留められたのにも関わらず帰宅した親子や、自家用車で避難した女性が津波に巻き込まれてしまうというストーリー。ものすごい勢いで津波が淀川を遡上し、氾濫する映像が流れる。巨大津波に襲われる瞬間の「あの時こうしていれば」という人々の後悔が痛ましい。災害の恐ろしさを改めて体感する。

火災による二次災害を防ぐために

次に「減災を学ぶ」エリアへ。コンロやダイニングテーブルが設置された部屋に通され、地震直後の行動について説明を受ける。実際にストーブの火を消したり、コンロの元栓を閉める等の体験を行い、地震火災の発生を未然に防ぐ方法を学ぶ。阪神淡路大震災では火災による二次災害も甚大だった。通電後の火災を防ぐため、ブレーカーを落としてから避難したい。

消火の手順と煙の怖さを知る

次は「消火を学ぶ」エリアへ。火災が起こった際、周りに知らせたり通報するなど、一連の行動について教えていただく。その後、実際に消火器を使った体験を行う。まず消火器の黄色の安全ピンを抜いて、モニターに映し出された火の元を狙いホースを持ち、黒いレバーを握って噴射する。上手く消えると嬉しい。
消火器は至るところに設置されているが、使用したことがある人は少ないだろう。普段よく目にする消火器(危険物施設など場所によっては特殊な消火器もあるそうだ)は、ほぼ全て同じ使い方なので、一度学んでおくと、いざという時も慌てず対処できそうだ。

消火体験の後は「煙を学ぶ」エリアへ。火災の際、発生する煙から逃げる方法を教わる。ガラス張りの細い通路があるので、そこで実際に煙の中を進む体験をする。煙が充満する前に、ハンカチで鼻と口元を抑えて、壁を伝いながらできるだけ低い姿勢で素早く通らなければいけない。筆者が通路を渡り切ったときには煙が充満してしまった。煙の広がるスピードは思いの外、速いと実感。正しく素早い行動が肝心である。

地震直後「がれきの街」に潜む危険とは?

煙中避難体験の次は「がれきの街」エリアへ進む。地震直後の被災した街をリアルに再現した空間で、余震の被害について教わる。南海トラフ巨大地震で発生した津波は、大阪市内でも約4~5メートルまで到達すると言われている。津波がどのくらいの高さまで到達するか、ビルに投影されたプロジェクションマッピングの映像を観る。3F階建てビルの2F付近まで水没している状態だった。
次に余震の際、窓ガラスが割れるなど、どんな危険なことが起こり得るのか、こちらもプロジェクションマッピングの映像を通して知っていく。
最後に「がれきの街」を歩きながら、ビル看板の落下や電線の漏電など、どんな場所に危険が潜んでいるかを教わる。

震度7、縦横2タイプの揺れを体験

ツアーの最後は、起震装置に乗って、震度7の揺れを体験する。都市直下型といわれる阪神淡路大震災の縦揺れと、海溝型といわれる南海トラフ巨大地震の横揺れの2パターンあった。直下型地震の揺れを体験した時「まさにこんな揺れだった」と阪神淡路大震災に遭った日のことを思い出した。珍しく深夜遅くまで受験勉強をして、眠った直後に震災が起きたことを…。
以上で、防災学習ツアーは終了だが、他にも自由に見学できるエリアがある。
例えば「キッズしょうぼうパーク」という子ども向け体験コーナーがあり、防火・防災クイズや、モニターに映るレスキューパンダのたすけるくんと一緒に踊ったりもできる。
また「おおさか情報ステーション」では円形モニターに投影された大阪市全域の地図から被害想定などを知ることができる。
その他、エレベーター内で地震に遭遇した時の行動(地震を察知したら即すべての階のボタンを押さなければならない)や119番の通報の方法を学べる体験学習ゾーンも充実している。

 

企業防災事業所向けに新設されたFコース

今回はCコースの防災体験学習ツアーだったが、AやBのコースでは、救助や救護の方法も学べるようになっている。
2022年から従来の5コースに新しくFコースが加わった。こちらは企業防災に取り組む事業所向けのコースである。一定の規模の建物には必ず屋内消火栓の設置が義務づけられているが、この消火栓を取り扱い方を学べるそうだ。屋内消火栓の扉を開け、ホースを取り出し、モニターに映し出された炎に向かって実際に水を噴射するという。Fコースは10名まで、事前予約が必要とのことだ。

「幼稚園の遠足や小中高の校外学習、PTAの学習会、企業や自治体の研修、海外からの観光客など、さまざまなグループや団体の方が来られます。土日はご家族で訪れる方も多いですね。グループによって、シアターの内容を変更する等の対応も行っています」と阿倍野防災センター長の松尾さん。

30年以内に発生すると言われている南海トラフ巨大地震。大阪府では最大13万人以上の死者がでると予想されている。あべのタスカルの防災体験学習ツアーを通して、楽しみながらも真剣に命を守る術を身につけてほしい。

体験型防災学習施設
大阪市立阿倍野防災センター あべのタスカル

観覧時間/午前10時〜午後6時(入館の最終受付は午後5時30分)
休館日/水曜日・毎月最終木曜日(祝日の場合はその翌日)年末年始(12月28日~1月4日)
入館料/無料
〒545-0052 大阪市阿倍野区阿倍野筋3丁目13番23号 あべのフォルサ 3F
予約・問合せは、06-6643-1031まで

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この記事を書いた人

しまかもめ
しまかもめフリーライター
(株)大阪宣伝研究所にコピーライターとして勤務。その後、デザイナー、編集者、フリーペーパー営業、ネットショップ企画運営を経て、独立。神戸市在住の3児の母。防災に携わる人々の取材をしています。