自社のブランディングやマーケティングのために、企業がSNSを活用することは、今や不可欠な要素だ。特に地方でのビジネスやBtoB事業を行う企業にとっては、その認知を拡大する上で最も重要なツールのひとつだろう。
福井県小浜市で日用品雑貨を取り扱う岸田産業株式会社では、新しい事業の柱として防災グッズの企画販売に取り組んでいる。中でも防災ブランドを立ち上げるため、SNSでのブランドアカウントを開設し、その運用に注力してきた。今回は、このSNS担当者で、企画部マネージャーの千代さんにお話を伺った。
来る大規模災害を前に、伸びる防災用品の需要
江戸時代から塗り物が盛んだった若狭小浜地方。岸田産業はその地で明治10年に創業した。塗箸や漆器を製造する工房からはじまり、現在ではキッチン用品やDIY工具、冠婚葬祭用の小物など、パーソナルギフトや企業のノベルティを取り扱う日用品雑貨メーカーとして事業展開してきた。
一方で、若狭小浜を含む北陸甲信越地方は、2004年の新潟県中越地震、2007年の石川県能登半島地震、新潟県中越沖地震と震度6~7レベルの大地震に見舞われた。また地形の影響で、河川の氾濫や土砂災害が発生しやすく、日本有数の豪雪地帯でもある。
日常的に災害と隣り合わせだったこともあり、2007年から新たに防災OEM事業を立ち上げ、防災用品の企画・販売に尽力してきた。
「日本各地で災害が多発し、将来的にも大規模な地震が想定されています。全国的に防災への意識を高まっているようで、弊社でも防災用品の販売シェアが拡大してます」と千代さん。
主に自社のオンラインストア「クラシド」や楽天で、防災グッズを手に入れることができる。
防災に特化したブランドづくり。レビューの声をきっかけに
オンライン販売をはじめてから、ありがたいことに防災用品の売れ行きは好調だという千代さんだが、同時に疑問が生まれたという。商品レビューの「この商品を使う日が来ないことを祈ります」という顧客の声をよく目にするようになったからだ。
「確かに災害に遭わないことが一番です。でも商品として必要とする日が来ないのは、果たして正解なのだろうか、と疑問が湧いてきたんです。期限がきたら捨てられる。商品企画をしている身としてはやるせない思いがありました」
納戸や押し入れの奥で眠っている非常食や防災グッズ。気づいたときには賞味期限が切れていたり、故障していた経験は一度や二度あるだろう。6割以上の人が備蓄商品の期限切れで使えなかったというデータもある。
そこで、千代さんは社内外で相談し、日常でも非常時にも役立つ「フェーズフリー」をめざした防災ブランド「esona(えそな)」を立ち上げることになった。
SNSアカウントで伝える、日常でも役立つ防災
普段づかいもできて、環境にも配慮した防災の在り方を伝えたいとつくられた防災ブランド「esona(えそな)」。2022年の初めには、instagramでのブランドアカウントを開設。これまでに、火災時の対処法や豪雨のサインといった災害豆知識や、再生糸・再生綿から生まれた軍手、竹の粉末でできた歯ブラシなど、普段から使える防災グッズの紹介をしてきた。
「インスタグラムでは、日常の中でできる防災についての情報発信をしています。いいね!やコメントをいただけるとやっぱり嬉しいですね」と千代さん。女性3人のチームで運用しており、開設から1日も休まず投稿しているというから驚きだ。
「もしものときに後悔をしないように、ひとりでも多くの方に備えていただきたい。esona(えそな)は、そのきっかけになりたい、という思いで注力しています。今後はSNSコミュニティで集めた声を活かした商品づくりをしていきたいと思っています」
来月にはesonaとしては初めての防災グッズ「選べる防災セット」が発売されるとのことだ。楽しみに待ちたい。
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岸田産業株式会社 明治10年(1877年)福井県にて創業。昭和58年(1983年)設立。日用品雑貨の企画・開発・製造・販売を行う。主な取り扱い商品は、木製のキッチン用品とリビング雑貨、バス用品、DIY工具、冠婚葬祭用の小物。2007年より防災OEM事業を開始。2021年、防災ブランド「esona(えそな)」を立ち上げる。 |
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