半径1.8mのクリエイティブ vol.3
夫婦の仲を深めるビール


長男(5才)の幼稚園で行われた、はじめての保護者会。

自己紹介することになり(当然そうなりますよね~)、なぜか親の趣味も発表してください(エッ!?)ということがあった。しかも運悪く、先生の隣に座っていたので、1番に発表することになった。長女の通った幼稚園では子どものことを話す機会はあっても親のことを紹介する場面はなかったし、引っ越したばかりの幼稚園で様子もわからなかったこともあって、内心プチパニックになった。動揺したわたしは、

「趣味は夫と晩酌することで、毎日の小さな幸せです(ウフフ)」

と虚言を吐いてしまった。夫は超絶多忙で土日もなく、トップ・オブ・ザ・ワンオペのわたしは、子どもが生まれて此の方、晩酌したことなど片手で数えるほどしかない(授乳中だったし)。息子のために、とにかく良さげなことを言いたい!言わせてくれ!という、ほとばしる母としての熱きパトスがそんなことを言わしめた。そして即刻、後悔した。ドラマ見てます、とか、料理です、とか、もっとママらしい(?)趣味を言えば良かった~。息子の幼稚園でこの幸せの当て付けいりますか(いや、いらんでしょ。嫌われるし、そもそも嘘だし)。へたこいた~!!

その晩、この話を絶賛仕事中の夫にメールで伝えてみた(諸事情により、メインコミュケーションはパソコンメールのみ…)。

それからというもの、仕事に余裕があるときに夫は、駅前のコンビニでいくつかのビールとおつまみを買ってくるようになった(ド深夜の帰宅だけど)。結果オーライ、雨降って地固まる的なことになった。

夫とは留学先のアイルランドで出会った。授業が終わるとよく夫やその仲間たちとパブに行って、ギネスビールやシードル(リンゴのお酒。当時はギネスが苦手でアップルサイダー推しだった)を飲んだ。英語はあまり上手くならなかったが、夫と出会えたので良しとしよう。

というわけで、ときどきギネスを家で飲むようになった。パイントグラスに立ち昇るきめ細やかな白い泡を見ながら、(グラスは冷やさないほうがギネスの場合いい、と夫は言っている)チーフタンズ(※1)やヴァン・モリソン(※2)、OAU(※3)などをアレクサでシャッフル再生すれば、気分はもうアイルランドだ。

わが家はパイントグラスだけでなく、いくつかのビールジョッキを揃えている。サッポロやアサヒ、キリンなど、ビールの銘柄と同じジョッキで飲むのは居酒屋のようで乙だ。ビールは、よなよなエールもおすすめ。軽井沢産まれのクラフトビールで、フルーティでとっても呑みやすい。かれこれ15年前、神戸元町のバーで部長にごちそうになって以来の大のお気に入りだ。

もし気の利いたものがなくても、冷凍庫にあったピザ用チーズや、朝食に使うスライスハムだって立派なおつまみになる。贅沢を言ってはいけない。1日の最大の山場、晩ごはんを作り終えると、精も魂も尽き果てているのだ。万が一にも余力があれば、冷奴の上にキムチをのせ、ごま油と醤油を垂らしてみよう。星三つのスペシャルおつまみの完成だ(幻のメニュー)。そこに自家栽培した枝豆(vol.4参照)が加われば、最の高である。

居酒屋やバーで飲むのもいいけれど、ほんのわずかな工夫で、ご家庭でもよそいきな雰囲気を作ることができる。お出掛けするときも、家でのひとときも、どちらも貴重な人生のひとコマ。クリエイティブに楽しんでいきまっしょい!

スロンチャー!!(アイルランド語で「乾杯」の意)

(※1)アイルランド音楽の代表的なインストバンド。グラミー賞を多数受賞。
(※2)北アイルランド出身のミュージシャン。ソウルフルな歌声が持ち味。アイルランド留学時の先生が、歌はいいが人格は破綻していると言っていたのが印象的。「Crazy Love」は胸熱ナンバー。
(※3)OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND。ティンホイッスルやフィドルなどアイルランド音楽に欠かせない楽器を取り入れたアコースティックバンド。ドラマ「きのう何食べた?」の主題歌「帰り道」は名曲。ボーカルTOSHI-LOWさんの妻が女優のりょうさんだと夫が言って、OKAMOTO’Sのハマオカモトが浜ちゃんの息子だと知ったときくらいにびっくり仰天したのが、3日前。

この記事を書いた人

しまかもめ
しまかもめフリーライター
(株)大阪宣伝研究所にコピーライターとして勤務。その後、デザイナー、編集者、フリーペーパー営業、ネットショップ企画運営を経て、独立(コトバアトリエ)。神戸市在住の3児の母。