宮城県女川町のことは知っているだろうか。東日本大震災で8割もの建物が津波の被害に遭ったが、力強く復興していく姿に、勇気づけられたという人は少なくない。合田七海さんもその一人だ。
前回取材した神戸学院大学「防災女子」のOGであり、社会防災学科で防災について学んできた合田さん。学生ボランティアのこと、女川移住の経緯などをお聞きしました。
神戸学院大学「防災女子」とは?
「大阪に帰省しても、すぐ女川に戻りたくなっちゃうんですよね」と笑う合田さん。
女川移住へのはじまりは、15歳のときに起こった東日本大震災で、TV越しに見た自衛隊の姿に憧れたことからだった。
「自衛隊のように、人を直接助けられる人になりたいと思いました」
まずは防災の知識や、東北の現状を見た方が力になれるんじゃないかと考えて、進学先を探していたとき、ちょうど神戸学院大学に社会防災学科が新設されるのを知った。
「タイミングがぴったりで、他に選択肢はなかったですね」
2014年、晴れて神戸学院大学の現代社会学部社会防災学科へ入学。在学中は、地震発生のメカニズムや災害後の復旧復興などを学ぶ。ゼミでは、災害医療などを研究。フィールドワークも多く、各地へ出向いた。
一方、課外活動でも防災に関わることに。学生消防団に所属するとともに、ボランティアサークル「防災女子」には立ち上げから参加。地域や企業の防災イベントで活動する中、神戸市の阪神淡路大震災1.17のつどいは特に記憶に残っている。ブースで非常食の実演(強化ポリ袋にお米を入れて鍋で炊いた)を行うと、お母さんたちから「初めて知った」「お家でもやりたい」と好評で、とても嬉しかったそうだ。
また、学生ボランティアとして被災地支援にも参加した。神戸学院大学では30名ほどの有志が集まり、バスに揺られて、宮城県の名取や石巻へ行った。その後、合田さんは震災支援を続けたいと、小規模ながら学生ボランティア団体を仲間たちと一緒に立ち上げて、東北へ毎年訪れることにしたという。
2014年にボランティア活動をしていたとき、宿泊先の近くに住んでいた女川の方が、震災の状況を説明しながら女川周辺をぐるっと案内してくれた。
翌年からは、雄勝町でボランティアをしていたが、その宿泊先とし
「来る度に、女川の景色が変わっていて。復興するスピード感に魅了されたんです」
新しい力・若い力を応援する女川
女川のことは忘れられなかったが、大学卒業後は上京し、防災・非常食メーカーの営業として働くことに。慣れない仕事に体調を崩してしまうと、ますます女川への気持ちが高まっていった。その矢先、NPO法人アスヘノキボウのお試し移住プログラムのイベントが東京で開催される。合田さんは思い切って退職し、女川への移住プログラムに参加することに決めた。
地方はよそ者に対して閉鎖的なイメージがあったが、女川は違う。震災後、人口減少率全国ワースト1位の影響もあったのだろう。街を上げて、新しい力・若い力を応援しようとする土壌がある。
「女川には外から来る人を歓迎してくれる雰囲気がありました」
合田さんは移住後、アスヘノキボウを通していろんなプログラムに参加。現在は、その縁から、シーパルピア女川にある日本茶・紅茶専門店「TEAVER TEAFACTORY」の社員として、また夜は居酒屋「酒飯処かぐら」でアルバイトとして働いている。休みの日には、仲良くなった同年代の移住者たちと一緒に遊びに行くのがとても楽しいという。
「移住の夢が叶って、今が一番充実しています。居心地のいい女川で、このまま暮らしていけたら幸せですね」
震災復興をきっかけに、移住者と地域住民との交流が盛んになり、街の活性化につながった女川。地方の街づくりは、合田さんのような若い人たちが不可欠だろう。若い人というのは地域において最も貴重なリソースなのだ。
合田 七海 1996年大阪府堺市出身。2014年、神戸学院大学 社会学部社会防災学科に入学。同年よりボランティアサークル「防災女子」に所属。また東日本大震災の学生ボランティアとしても活動。大学卒業後は、就職のため上京。2019年より女川へ移住。現在、日中は日本茶・紅茶の専門店「TEAVER TEAFACTORY」の社員として働き、夜は居酒屋「酒飯処かぐら」でアルバイトをしている。趣味は、音楽と映画鑑賞。女川でWACK所属アーティストによる音楽フェスを観て以来、ファンに。映画は映画館で観るのが好き。 |
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